世界が報じた日本 9月3日~9月9日

1.サマリー

先週の日本の政治・経済についての主な記事は7記事。同時期の日本の主要紙は自民・民主両党の代表選の行方について主に報じていたが、海外紙にとっての重要度は低かったようだ。

2.日本の外交

<日露関係>
WSJは、日露関係についての記事を2本掲載した。
まず、日本のエネルギー政策の変化という文脈から、日本がロシアからの天然ガス(LNG)の輸入を拡大しようとしていることを取り上げた。日本への輸出に向け、ロシア東部のウラジオストクにLNG工場建設が予定されており、完成すれば年間輸入量の12%にあたる1000万トンを生産できると報じた。また、技術的・金銭的課題は大きいが、日本海を通過するパイプラインの建設の計画も紹介した。これらの背景として、東日本大震災後の脱原発の動き、輸入の大部分を頼る中東の政治情勢不安から、エネルギー資源の確保のため日本の外交政策が変化していると分析した。ロシアも主要輸出先である欧州が債務危機に陥っており、輸出先の多角化を図っているとみている。
次に、こうした流れも踏まえ、日本がロシアとの領土問題を解決する好機ととらえていると報じた。第2次世界大戦終戦後にソ連(当時)が占領した北方4島に関しては係争中であり、両国が平和条約を結べていない大きな要因となっていると紹介した。昨今ロシアは中国の台頭を警戒していることもあり、プーチン大統領がこの問題に対し、「引き分け」という日本語も使い和解の姿勢を示したことを報じた。ただし、政権が不安定な日本が、解決に向けて明確な態度と行動をとれるかがカギだと指摘している。

3.日本の経済

<日銀>
WSJは、世界経済回復の見通しがみえないことから、政策決定会合を控えた日銀が窮地に陥っていると報じた。日銀は「海外経済が減速した状態から脱していくにつれて、緩やかな回復経路に復していく」とする景気認識を維持しているが、第1四半期に比べ、第2四半期の輸出・生産の下振れリスクは現実のものとなりつつあると指摘した。さらに、東日本大震災後に回復基調にあった内需も苦しい状況だとみている。

<高齢者消費>
WSJは、高齢化の進む日本において、高齢者の消費が日本経済に寄与すると評価した記事を掲載した。外需の低迷から内需が景気回復の要因とされている現状で、高齢者の安定した年金と豊富な余暇時間は好材料だとみている。実際、高齢者向けビジネス市場は約100兆円と試算されていると指摘した。高齢者のインターネット利用についても、過去12年間で4.5%から57%にまで急上昇したという調査があり、eコマース市場のさらなる発展が期待されると分析した。

4.日本の政治

<政治の停滞 財政の危機>
先週WSJが報道した政局について、FTは、財政危機を招いているという文脈で報じた。野党の首相問責決議案により、このまま赤字国債発行法案の可決ができなければ、予算の約半分に当たる38兆円がまかなえず、まず4.1兆円にのぼる地方交付税の交付が延期されると指摘した。4日の記事公開時点では、国債市場は冷静だとしているが、政治的リスクは格付けを引き下げる最大の要因だと指摘するコメントを紹介した。

WSJは、地方交付税交付の延期が確実になり、日銀は悪影響を防ぐために、約1.9兆円という大量の資金を注入せざるを得なくなったと報じた。

5.その他

<東京都、尖閣諸島を調査>
WSJは、9月1日~2日に行われた東京都による尖閣諸島の調査に同行取材し、記事を掲載した。都は政府から上陸許可を得ることができなかったため、調査は購入を検討している主要3島に対して海上から行われた。指揮を執る坂巻政一郎・東京都尖閣諸島調整担当部長をはじめ、調査団はこの海域を訪れるのは初めてであったと紹介した。3島の調査は夜明け頃から夕方まで行われ、ヤギや水源の発見が報告されたとしている。山田吉彦・東京都専門委員(尖閣諸島担当)は、ヤギが繁殖し植物を食い荒らしていることが確認されたため、もう1度調査を行う必要があることを強調した、と報じた。

Text by NewSphere 編集部