世界が報じた日本 8月20日~8月26日

1.サマリー

先週の日本の政治・経済についての主な記事は12記事。うち8記事が領土問題をめぐる日中/日韓関係についてであり、海外でも注目度の高さが伺える。

2.日本の外交

<尖閣諸島問題、中国の反日デモ>
8月15日、沖縄県・尖閣諸島の魚釣島(中国名・釣魚島)に香港の団体メンバー7人が上陸した。県警と海上保安官らは、全員を入管難民法違反容疑で逮捕し強制送還した。18日、西安で数百人規模の反日デモが行われた。19日、日本の地方議員ら10人が尖閣諸島の魚釣島に上陸した。同日、深センなど各地で大規模な反日デモが行われた。

FTは、2010年の中国漁船衝突事故など、これまでにも日中間では尖閣諸島をめぐり多くのトラブルが起きており、その度に反日デモが発生していたことを指摘した。日本車や日本食レストランの襲撃など、地域ごとのデモの状況を詳細に報じた。中国共産党は、数十年にわたり反日感情を利用して政治的安定を保ってきたが、そのために合意に至れなかった日中間の取り組みも多いと指摘した。さらに、今回の件は東アジアでの海底油田やガス田を巡る紛争のひとつに過ぎないとし、中国は南シナ海においても領有権をめぐってフィリピン、ベトナムらと争っている点にふれた。また、領土問題をめぐる日中関係の悪化という文脈で丹羽中国大使の交代を報じた。同記事内では駐韓・駐米大使の交代についても報じており、どちらも外交関係が悪化していると指摘した。

IHTはまず、中国の反日デモに関するインターネット上の投稿を紹介した。デモを小規模とする中国メディアの報道と異なり、実際には数千人規模のデモが地方都市で行われている様子が投稿されていると報じた。さらに、中国政府に軍隊の出動を求めたり、政府の対応を批判する声もネット上に多く投稿されたが、すぐに消去された点を指摘している。一方日本に関しては、尖閣諸島に上陸したメンバーの首相への不満や自国領土の再確認を強く求める発言などを掲載している。また2010年の尖閣沖漁船衝突事故後、中国がレアアースの輸出を制限した一件を詳細に報じた。

<竹島問題 日韓関係>
8月10日、韓国の李明博大統領が竹島(韓国名・独島)を訪問した。14日、李大統領は天皇陛下の訪韓に関連し謝罪を要求した。21日、日本は韓国に国際司法裁判所(ICJ)への共同提訴を提案した。しかし、韓国はこれを記した大統領宛親書の受け取りを拒否した。24日、衆院本会議で竹島不法占拠・天皇陛下への謝罪要求発言への抗議決議が採択された。

WSJは、竹島問題の背景にある日韓の政治状況に焦点をあてた。野田政権は、尖閣諸島に上陸した活動家を起訴せず強制送還した点が野党から批判されており、早期に総選挙を迫られる立場の中で強硬姿勢を示すよう圧力がかかっていると報じた。韓国の李大統領は、低迷する支持率の上昇を狙い竹島問題に対する過激な言動を行ったとみている。また今回の竹島問題に対日本の対応は異例の激しさであるとし、駐韓大使の一時帰国や国際司法裁判所(ICJ)への提訴検討、さらにはスワップ協定拡充見直しや国債購入停止の検討にもふれている。ただ、影響は両国にとって限定的とのコメントも紹介している。これらを総括した記事では、領土問題の根本は歴史認識の問題だと指摘している。

3.日本の経済

<貿易赤字拡大>
8月22日、財務省が発表した貿易統計速報によると、7月の貿易収支は5174億円の赤字となった。特に輸出が前年比8.1%減となった影響が大きい。地域別では中国・EU向けが大幅減となった。EUに対しては953億円の赤字となり、5月に初めて貿易赤字に転じて以降、最大の赤字額を記録した。

FTは、日本の貿易赤字は予想の約2倍にのぼり、1979年以来最大となったと報じている。EUでは長引く債務危機が不景気を後押ししており、「明るい展望が全く見られない」という日本のアナリストの見解を紹介している。また、バブル後の日本で非金融部門の法人が悩まされたデレバレッジング(負債圧縮)問題が、EUでは銀行、政府、家計全てに生じていると指摘した。欧州委員会は、日本との自由貿易協定により成長と雇用の拡大を望めると考えているが、自動車業界などは強く反対している。

WSJも、日本の貿易赤字が想定をはるかに上回ったと報じている。この影響を受け、日本銀行はもはや金融政策を緩やかにする方針を取らざるを得ない状況になっていると報じた。中国への輸出も減少しており、今後世界情勢から受ける打撃はEUが受けたものより大きくなる、という予測を紹介している。

<政府、デフレ脱却の見通しを発表>
17日、内閣府は「平成24年度の経済動向について(内閣府年央試算)」という文書を発表した。GDP成長率は、実質で2.2%程度、名目で1.9%程度と見込んでいる。総合的な物価動向を示すデフレーターは0.2%上昇と、1997年以来のプラスに転じる見込みだ。
WSJは、多くのアナリストが懐疑的であることを報じた。WSJの調査では、デフレーターについてエコノミスト10人の予測の中央値は0.5%のマイナスであった。消費増税前の駆け込み需要を考慮に入れても厳しいという見方を紹介している。

4.日本の政治

<脱原発に向かう日本>
2011年3月の福島第一原発事故を受け、野田首相は、エネルギー政策について「国民的議論に関する検証会合」を設置した。2030年の原発比率について「0%」「15%」「20~25%」の3つの選択肢を用意し、世論調査などを行なってきた。
WSJは、この結果最も支持の多かった「0%」を政府が検討していると報じた。背景として、大飯原発再稼働に反対する官邸デモに75,000人が集まるなど、国民の原発に対する反対が強いことにふれた。一方、産業界の反対は根強く、多様な発電方法の確保がエネルギー保障にとって重要だという見解を報じた。

Text by NewSphere 編集部