アジアのサッカー関係者から見たJクラブの育成「非常に戦術的」「差は小さくなった」

 近年、アンダー世代で主要国際大会の出場権を逃すことが増えており、日本サッカーの課題として浮き彫りになった感がある。そこで、Jリーグが「育成世代での国際経験の創出」を標榜し、ユース世代の国際大会新設に尽力している。9月21~23日。アジア各国のクラブと、Jクラブがしのぎを削った「2015 JリーグU-17チャレンジカップ」が、大阪のJ-GREEN堺で初開催された。日本からは、鹿島アントラーズ、ジェフユナイテッド千葉、横浜F・マリノス、松本山雅FCの4クラブ。アジアからは、韓国の蔚山FC、タイのチョンブリFC、ベトナムのPVF、中国から杭州緑城の4クラブが参戦した。

 各Jクラブは、17歳より下の世代や、レギュラーメンバーではない選手が出場するなど、結果よりも経験を重視して大会に臨んだ。それでも自力の差を見せ横浜F・マリノスが1位、松本山雅FCが2位と上位を独占した。ただ、アジア各国が台頭しつつある昨今の構図を考えると、特に育成世代におけるライバル国の意見は貴重ではないだろうか。日本の育成はどう映っているのか。今回は、アジア各国のクラブ関係者の声に耳を傾けた。

◆韓国から見る日本の育成文化「非常に戦術的である」
蔚山FCコーチ ジュアン・ヨンチュンさん
「日本のチームは育成世代から非常に戦術的なチームが多い、という印象を持っています。特に横浜は素晴らしいチームでした。パスやトラップなど純粋なテクニックでは、日本のチームのほうが韓国より上だと思います。ただ、蔚山も走力やフィジカル面、ボディコンタクトでは、負けていなかった。要は、文化が違うので単純な比較は出来ないということです。日本と比較すると、韓国サッカーは個人能力に頼ったスタイルやパワープレーを好む傾向があります。今回はJクラブに小柄な選手が多かったこともありますが、体が成長し、将来的に同年代で対戦することになった際に、本当の意味での比較が出来るのではないでしょうか」

Kリーグ・クラブサポーティングアシスタントマネージャー ヤン・ジュンソンさん
「Kリーグは、Jリーグの運営や育成面から様々なことを学んできました。実際に地域密着型のスタイルや、黒字経営を続ける運営メソッドなどは韓国にはありません。(編注:Kリーグは代表人気とは異なり集客に伸び悩んでおり、赤字経営のチームが多い)育成世代の戦術性、技術に関しても、日本は高いレベルにあると思います。両国の関係から言うと、時には日本が上、時には韓国が上という歴史の繰り返しでした。ただ、近年では日本、韓国、そして中国も含めて差はほとんどなくなってきていると感じています」

◆ベトナムクラブ「勤勉性を根付かせるのには国民性と時間が必要」
PVFヘッドコーチ ニュエン・ポウ・チョンさん
「3年前にJクラブと戦った際も感じましたが、日本では選手全員が常にムーブ、ムーブして連動しますね。ベトナムでは、パスを出した後はどうしてもボールウォッチャーになってしまう。この辺りは厳しく指導しても、なかなか根付かせるのが難しいです。ベトナムでも技術レベルは向上していますが、Jクラブとの大きな差はサッカーに対する取り組み方が最も大きいのかと。なぜ組織的な動きができるのか。その答えは、日本人が持つ勤勉性が、サッカーにもしっかりと反映されているからではないでしょうか」

◆タイクラブ「日本のパスサッカーを参考にしている」
チョンブリFC・ヘッドコーチ ヌッチャット・ヴィジユチャカンさん
「チョンブリでは日本人が監督していたこともあり、日本のパスサッカーや戦術面などを参考にし、積極的に取り入れています。(編注:2014年に元・ヴィッセル神戸、現・京都サンガ監督和田昌裕が指揮をとった)タイとJクラブの違いは、プレスの速さ、コンタクトの強さといったゲームスピード全般ですね。試合中にサボる選手や、気持ちが切れる選手も少ない。上のレベルになるほど、中盤で焦らずに組み立て直すことも必要ですが、タイにはまだこの文化が浸透していません。こういった考え方はタイに帰って、チームに落とし込みたいです。あとは、レフリングの質は明らかにタイや他の東南アジアより上だと感じました。レフリーの質を上げることは、サッカーの質に直結してくるので、その点も見習うべきポイントだと思います」

Text by 栗田シメイ