猫好き日本、猫目線のストリートビューまで…海外も興味津々 村上春樹の小説のよう?

 日本は大変な猫好きの国だとのイメージが広く海外メディアで確立されているようである。和歌山電鉄貴志川線貴志駅の「たま」元駅長と、その後任、「たまII世駅長」の「ニタマ」に関するニュースは、世界中のメディアで報道された。広島県が今月1日よりネットで公開を開始した「広島キャットストリートビュー尾道編」は、そのイメージをさらに強化するものとなった。

◆「世界初」の「キャットストリートビュー」とは
「広島キャットストリートビュー尾道編」は、広島県が「カンパイ!広島県」観光プロモーションの一環として公開したもの。尾道市の商店街や「猫の細道」を猫の視点で歩くことができる。Googleマップの「ストリートビュー」とよく似たものだが、目線は猫の体高の20センチメートルの高さにある。

 尾道市について、UK版『WIRED』は、美しい寺社と、たくさんの猫がいることで有名だと伝える。広島県の観光課の担当者は、CNNに、「この街では猫が至る所にいて、細い路地裏も含め、この街の魅力を一番よく知っています。それでこのアイディアを考案しました」と語っている。

 ウォール・ストリート・ジャーナル紙(WSJ)ブログ「日本リアルタイム」は、広島県は、異なったアングルから県の見どころを見たいと思っている観光客のためのパーフェクトな地図を作製した、と伝えた。パーフェクトを「purr-fect」とつづっている(purrは猫がゴロゴロ喉を鳴らすこと)。

 WSJなどによると、この「キャットストリートビュー」では、お店の看板猫を務める猫など11匹と出会うことができ、それぞれのプロフィールも表示できる。テレグラフ紙はこの「ビュー」について、猫好きたちに尾道市を訪れさせるアイディアだとした。

◆尾道に暮らす猫の生活を疑似体験?
 この「キャットストリートビュー」で、案内役を務めるのは、エメラルドグリーンの目をしたふわふわの猫(テレグラフ紙)、商店街の美容室の看板猫「ララ」ちゃん。ララちゃんは広島県路地裏観光課課長に任命されている(CNN)。

 海外メディアの記者らは、ここで暮らす猫たちの生活を想像する楽しみを、このサービスに見出したようだった。「猫になって日本の街を散歩してみたい? 新しいオンライン地図でそれができるようになったよ」とテレグラフ紙は語った。自分がこの街に住んでいるたくさんの猫の1匹だとしたら、どんな感じなのかを知ることができる、としている。

 CNNは、この「ビュー」によって、猫の視点から日本のある街を体験することができ、近所の猫たちと付き合うことさえできる、と伝え、それはほとんど村上春樹のある小説のようだ、と語っている。「ビュー」は、ララちゃんのような猫の生活を想像することを可能にするものだと語っている。

 ニュースサイトVOXは、普通の地図を「鳥視点」、この「ビュー」を「猫視点」だとして、猫視点の地図のほうが、お高くとまった鳥視点のどんな地図よりもクールだ、としている。VOXは、人間が世界をより良く知るために、猫視点の地図を利用することができる、と語っている。

◆親猫国・日本は猫好きにとって人気の旅行先?
「猫好き日本」のイメージに絡めた報道も多く見られる。日本は猫を駅長に任命したことでつとに有名だが、今や日本はその熱烈な猫への愛好ぶりを一歩進めた、とWIREDは伝えた。

 テレグラフ紙は、日本の観光促進に猫が活用されるのはこれが初めてではない、と語り、貴志駅の「たま」元駅長について触れている。ロシアの政府系国際ニュース放送RT(旧ロシア・トゥデイ)も、猫が日本の観光促進の役に立つのは今回が初めてではないとして、何千人もの観光客が、異例のふわふわな駅員に会うために貴志駅を訪れた、と伝えている。テレグラフ紙は、6月にたまが死去した際には、日本中ばかりか世界中から弔問客が貴志駅を訪れた、と伝えている。

 またテレグラフ紙は、日本は人間よりも猫の数が多い島があることも誇りとしていて、日本は猫好きにとって人気の旅行先となっているようだ、と語っている。

 広島県によると、10月1日より、現在公開されている2エリアに、さらに2エリアが追加される。CNNによると、県観光課は、この「ビュー」に対する注目の大きさに驚いているという。他の街についても、同様のものを作る可能性を検討中だそうだ。県の担当者は、何といっても広島県には、有り余るほど豊富な漁獲のおかげで、至る所に猫がいることで有名な港町がたくさんある、と語ったという。

Text by 田所秀徳