日本の現代アートに世界が熱視線 チームラボ、天明屋尚氏などに米紙注目

 フィナンシャル・タイムスによれば、日本の現代アートが盛り上がりを見せているようだ。特に海外では、「具体美術協会」や「もの派」の作品に注目が集まっており、近年のオークションでは白髪一雄の作品が億単位の価格で取引されている。また、ニューヨークタイムズは、「日本アート2.0」として、若手の動きも伝えている。

◆日本のアート市場に復活の兆し?
 10月10日付のフィナンシャル・タイムスは、ロンドンで新しくオープンする日本の現代アートを主に扱うギャラリーを紹介しながら、昨今の日本のアート界の動きを紹介している。

 バブル時代には旺盛な動きを見せた日本のアート市場も、バブル崩壊とともに鳴りをひそめてしまっていた。国際的に活躍するアーティスト、例えば村上隆や奈良美智、草間彌生などはいるものの、現代アートの若手を支えるための国内市場が「事実上、存在していない」と、東京の画廊オーナーのジェフリー・イアン・ローゼンは言う(フィナンシャル・タイムス)。

 しかしながら、1960年代から70年代にかけて日本のアート界を風靡した「具体美術協会」や「もの派」の作品が脚光を浴びてきている。きっかけは、ニューヨークのグッゲンハイム美術館が展覧会を開き、注目が集まったからだ(フィナンシャル・タイムス)。

◆「具体」の作品に続々と高値が
 10月7日付のアートネット・ニュースでは、その「具体美術協会」や「もの派」の作品が、オークションで続々と最高値を付けて競り落とされているのを、具体的に伝えている。

 「具体美術協会」のなかでも、特に白髪一雄の作品に人気が集中しているようで、2013年のクリスティーズ・パリでは、1961年の作品「地劣星 活閃婆」が1,665,500ユーロ(約2,178,263ドル)で落とされた(アートネット・ニュース)。日本円で2億円を超える額である。

 また、今年の夏のオークションでは、1969年制作の「激動する赤」は、3,905,500ユーロ(約5,320,119ドル)で売られた(アートネット・ニュース)。5億円を超える額だ。

 そのほかにも、具体美術協会の創始者である吉原治良の作品や、嶋本昭三の作品が、香港やパリのオークションで、最高値を付けて競り落とされているのを伝えている。

◆伝統と革新的な技術が出会う日本のアート
 また、10月10日のNYTは「日本のアート 2.0」と称して、日本協会主催の展覧会「Garden of Unearthy Delights」を紹介。若手で注目される画家、天明屋尚、池田学、チームラボの作品を紹介しつつ、伝統に新たな視点を盛り込んだり、革新な技術を織り交ぜたりした、日本のアートの新しい動きを紹介している。

 天明屋尚の作品では、日本の伝統絵画に戦乱の武士を合わせた絵を紹介し、「天明屋はこの2つのジャンルに新しい視点をもたらしている」と評価。

 池田学の作品では、福島の原発事故に着想を得た「メルトダウン」や、北斎の「富嶽三十六景」の1つ、「神奈川沖浪裏」をモチーフにしつつ、現代文明の危うさを描いた「予兆」に注目している。

 また、チームラボでは、デジタル技術を用いて鑑賞者と作品がインターラクティブに作用して、制作者も把握していないものへと形作られる点に着目している。

 タカ・イシイギャラリーのオーナー石井孝之氏は、「現代アートは、まさに日本の次の大きな話題になろうとしている。市場には火が点けられ、炎は煽り立てられている」と、フィナンシャル・タイムスに語っている。

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Text by NewSphere 編集部