世界の音楽業界が中国に熱視線の理由 “音楽購入の転換期”その可能性とは

 ユニバーサル・ミュージック・グループ・インターナショナルのCEOマックス・ホール氏が5月22日、シンガポールのミュージックマターズ(Music Mattes)というアジアの音楽業界を率いる会議にて、今後のアジアにおける音楽について語った。

【音楽業界がアジアに注目】
 『THE Hollywood REPORTER』によれば、アジアの人口は世界の6割を占めるのにもかかわらず、音楽業界における売り上げでは全体の4分の1以下で、しかもそのほとんどを日本が占めている。同メディアは、急速に発達するデジタル技術とアクセスモデルにより、アジアの規模とその文化の重要性を反映した音楽市場が形成されるチャンスがある、と指摘している。

 同メディアによれば、ホール氏は、360度ビジネスモデルの本場であること、小売価格維持、新しいデジタル分野への転換など多くの点で日本はユニークであり、注目すべきだ、と語った。

【中国が持つ大きな可能性】
 『THE Hollywood REPORTER』、『Music Week』は、ホール氏がアジアの中でも特に中国に注目していることを報道している。ホール氏によれば、音楽の消費の仕方や、音楽に対する人々の行動というものを、次のステップへ進ませる力を持っているのは中国である。

 またホール氏は次のように語っている。「中国は、西洋諸国と日本が、過去50年間の間頼ってきたビジネスモデルを実質上迂回してきた。伝統的な音楽の買い方というものは、それがCDなどのハードなものであれ、デジタルなものであれ、中国では大きなスケールにおいは、ほとんど存在しなかった。音楽市場は、楽曲のトラックへのアクセスの導線確保を重要視する市場へと変化している。我々はその驚くべき転換の真っただ中にあり、その一部となれるということはとてもわくわくすることだ」

 同氏は、アジアにおいての重要な挑戦は、タレントの発掘のため、音楽業界における強固なエコシステムを構築することで、そのためにはビジネス、消費者、政府からの新しいアプローチが必要である、とも指摘している。

【西洋のアーティストが表現する、アジアとは】
 『PolicyMic』には、西洋のアーティストが音楽を通してアジアをどのように表現しているか、についての記事がある。同メディアによれば、多くの西洋のアーティストが、東洋の要素を取り入れた音楽を創り出すようになってきている。彼らは、東洋の要素を取り入れることで、他の音楽とは違った音楽を作れるという考えを持っているらしい。

 その例として、同質化された日本女性がPVに登場するアヴリル・ラヴィーンのHello Kittyや、曲の内容とは全く関係のないものの、タブラ、サリー、ビンディーといったインド文化が登場するセレーナ・ゴメスのCome and Get It、バックアップダンサーとして日本人、日系アメリカ人を起用したグウェン・ステファニーのHarajuku Girlsなどが挙げられている。

 同メディアによれば、アヴリルは人種差別的だと批判された時、日本は大好きである、と反論したらしいが、問題はアヴリルが日本文化を好きかどうかなのではないという。西洋が見る日本文化というものが、彼女のPVに登場するようなカップケーキのドレス、同質化された女性、といったものばかりである、という点こそが問題なのだと同メディアは指摘している。

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Text by NewSphere 編集部