ウィーンに斬新すぎる「カゴ砂場」が登場 童謡「かごめかごめ」からインスピレーション

 ウィーンのミュージアムに作られた子供用砂場が注目されている。

「Architizer A+Awards」のpop-ups and temporary structures部門で賞を獲得したその砂場は、日本の籠目技術を取り入れたもので、子供の安全性と美しいデザイン性の両面を持ち合わせた作品だ。

【籠目(かごめ)の実用性】
 建築デザインサイト『detail』は、「砂場のデザインは難しくないが、遮光性を考慮すると容易ではない」と、設計・建築を担当したアーティストの言葉を代弁している。

 そこで、取り入れられたアイデアが、「生きた空間」である籠目技術なのだ。

 砂場を、生きた柳の木で籠状に覆うことで、柳が芽吹き茂る春から秋にかけて、砂場に天然の日陰を作る。また、柳の根本近くに葉が少ないことから、砂場の外の親から中の子供の様子が見えるという安全性も兼ね揃えている。非常に実用的な砂場の出来上がりだ。

【籠目(かごめ)のデザイン性と遊び心】
 籠目が持つ魅力は、実用性だけではない。この砂場も、ミュージアム内の設備である以上、設計において芸術的なセンスを問われたのは当然だろう。

 円形の砂場の周囲は、柳の幹のしなやかさを生かし、ドームのような形の籠が編まれている。緑の葉で作ったテントか、天然ツリーハウスのような、美しさと楽しさを合わせ持つ。

 籠の外からは若い柳の幹の隙間を通して子供たちの様子がよく見えているが、籠の中に入った子供からは、外の親や建物といった現実が見えにくい。山や森で作る隠れ家や秘密基地のような独特の孤立感と閉塞感は、子供にとってワクワクする経験となるだろう。

【海外でのかごめかごめ】
 しかし、なぜ籠目だったのだろうか?

 籠編み自体は世界の設計・建築業界で知られた技術であり、日本だけのものではない。しかし、このデザインは日本の歌「かごめかごめ」にインスピレーションを得て、日本の籠目技術によって作られているという。歌の内容に合わせ、鳥の代わりに本物の子供を入れた籠を作ってしまったわけだ。

 この「かごめかごめ」、日本ではもちろんよく知られた遊び歌の一つだが、実は意外に海外でも知られているらしい。とはいえ、日本の遊び歌全般が海外によく知られているわけではなく、この曲自身の持つ特殊性が理由だ。

 特殊性とは、この曲の歌詞がヘブライ語に、籠目の印がイスラエルのダビデの星の紋にそれぞれ酷似しているところにある。両者の関連性を研究する英語サイトもあるほどだ。

 そんな背景もあり、アーティストが技術としての「籠目」だけでなく、「かごめかごめ」を知っていた可能性もありそうだ。

【贅沢な砂場が完成】
 子供の砂場に必要不可欠な安全性以外に、ミュージアムという場所柄デザイン性が付加され、子供の遊び心をくすぐる構造も考慮されている。さらには、歌の持つ意味にかけたユーモアも感じられるという、非常に贅沢な砂場が完成した。

 このありそうでなかったアイデアを思いついたのが日本人ではなくオーストリア人、作られた場所も日本から遠く離れたオーストリアのミュージアムというところが興味深い。

 ただ、日本の技術と歌だけに、誇りを感じると同時に、日本で作られなかったことに少し残念な思いもある。

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Text by NewSphere 編集部