アメリカですし作り講座が人気? 一方、素手ですしを握れない州も
海外で一番人気の和食は何と言ってもすしだ。昨今、アメリカでは料理教室ですしの作り方を教える講座が人気を呼んでいる。海外メディアはすしにまつわる話題を取り上げた。
【銀座久兵衛店主に「聞くすし職人の心構え】
英BBCでは銀座久兵衛の店主、今田洋輔氏を取り上げた。現在68歳の今田氏は日本で最も知られるすし職人で、家族で経営する銀座店の他5店舗を経営している。1935年に今田氏の父親が開いた店は、氏の息子の代で三代目になる。
良いすし職人であるために必要なのはまず“心構え”であると、今田氏はBBCに語った。技術や知識に完成というポイントはなく、一生学び続ける姿勢が大切だと話す。50年以上の職人歴の中で、常に今日のすしが最高の出来だと思っている。技術や経験以上に、“気持ち”が大切な材料になるという。
【米料理教室で人気のすし講座】
ニューヨーク・タイムズ紙では昨今人気のあるすし作り講座について報じた。
ニュージャージー州パラマスの料理教室シェフ・セントラルでは、酢飯の用意から押しずし、巻きずし、握りずし、手巻きの作り方まで教えている。シェフになりたくて、家族みんなで楽しむために、初めてのデート、など集まる理由はそれぞれ異なる。一方で「共通する目的はひとつで、楽しめるということ」、とシェフ・セントラルの講師ジム・エドワーズ氏は話す。「すしが好きで良く食べに行く人なら、自分で作るにこしたことはない」と言う。
ニュージャージー州クラシック・タイムのデビッド・マートンオーナーは、すし作りを通して親しさを育んだり、グループでいっしょに作業をしたり、作ったものを見せ合ったりできる社交の場になっていることも人気の要因だと指摘する。“すし”の神秘を解き明かすという要素も魅力のひとつだ。教えることは基礎の基礎で、すし職人の作業からは程遠いが、生徒にとっては充分だと話した。
【カリフォルニア新法律に困惑】
ジャパンタイムズ紙によると、今年1月から実施されているカリフォルニアの法律で、すし店の職人たちは手袋をしてすしを握らなければならなくなった。
法律では果物や野菜を洗うのは例外として、食べられる状態の料理に素手で触ることを禁じている。カリフォルニアは、すしブームの火付け役とも言われカリフォルニアロール発祥の地で、他のどの州よりもすし店の数が多い。すし職人たちは戸惑いを隠せないという。
ロサンゼルス郡公衆衛生局のルーシー・マクドナルド氏は、「食中毒の拡大を予防する目的」と説明した。それに対し、トーランスすし調理学校のアンディ松田氏は意義を唱える。すし職人は食べ物の取扱や衛生についての専門知識を持っており、厳しい安全手順に従ってこまめに手洗いをしている。反対に専門知識を持たず手袋を使い、あまり手を洗わない方が汚染の原因になると指摘した。
すし屋の常識・非常識 (朝日新書) [amazon]