世界でブームの日本酒、飛躍を阻む流通経路問題 解決のカギとは?
昨秋の日露首脳会談終了後、61歳の誕生日を迎えたプーチン大統領に、安倍首相が出身地・山口県産の日本酒をプレゼントしたとの報道がありました。過去には、フランスのオランド大統領にも、日本酒が送られています。
日本酒が選ばれた理由には、海外要人に喜ばれるお土産であると同時に、日本酒などの米製品の海外輸出を広めたい政府の思惑と、日本酒メーカーの海外戦略の影響もあるようです。
【先駆者の地道な販促活動】
日本酒の海外進出には、おおまかに言うと、ふたつのルートがあります。ひとつは、高級品種である吟醸や純米酒などを、高級レストランやホテルなどでの飲食用に供給するもの。もうひとつは、大手メーカーが現地のスーパーに供給し、商品として販売されるものです。
前者については、海外輸出の先駆者「旭酒造」が、アメリカ、フランス、イギリス、オーストラリアなどで毎月試飲イベントを後援していたことが紹介されています。ブルームバーグによると、最高級の日本酒の味を知ってもらうのが目的とのことです。
【イギリス発の日本酒学習セミナーにも注目】
一方、後者について、日本酒が海外で日常的なアルコール飲料として受け入れられるのは、簡単ではなさそうです。そんな中、イギリスでの、「日本酒を学ぼう」という動きが注目されています。
ロンドンを中心とする「酒ソムリエ協会」は、日本以外の国で日本酒について学べる初めての場であり、イギリス人によるイギリス人のためのコースが作られているところに特徴があります。主たる講師は日本人の日本酒エキスパートですが、政府やメーカーが直接後押しするのではないとのこと。日本酒の歴史や製造方法を学び、様々な種類の日本酒のテイスティングを行っています。
ジャパンタイムズによると、コース参加人数は年々増加し、卒業生たちは世界各地でその知識を広めているといいます。国際的なワイン競技会で日本酒部門が設けられるようにもなってきたという情報も。徐々にではありますが、日本酒が特別視されず、他のアルコール飲料と肩を並べるようになりつつあるのかもしれません。
【日本酒消費拡大には、流通経路の確保と知識の拡大がカギ】
また日本国内では、軽いカクテル飲料やワインなどの流通にともない、若者の日本酒離れが進んでいるとの統計もあります。そのため、日本酒メーカーにとって、海外での安定した販売経路の開拓は重要課題となっているようです。
イギリスなどでは、日本酒の流通過程における扱いの難しさが浮き彫りになっています。温度管理が重要である日本酒にとって、流通経路が整わないことが、消費拡大の最大の弱点とのこと。そのため識者たちは、日本酒メーカーにとっては、大手ワイン流通業者との提携がシェア拡大の重要なポイントとなるだろうと指摘しています。
今後、流通に関する問題が解決されれば、海外の日本酒ファンにとっても選択の幅が広がる可能性は高いでしょう。日本人が、手頃な価格のワインを飲む時と高級ワインを味わう時とがあり、そのどちらもワインを楽しむ方法であることを学んだように、海外でも日本酒のランクごとの楽しみ方が浸透していくかもしれません。