「“気の滅入る調子”が最高」? 海外ファンが村上春樹を愛する理由
村上春樹氏の最新作『色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年』の英訳版が2014年に出版される予定だ。
発売後1週間で100万部を突破した記録的大ベストセラーに、ガーディアン紙は注目している。タイトルや出だしの文句から、ベストセラーとなるような印象は感じられないとしつつも、主人公や内容の一部を抜粋し紹介している。
また同紙は、以前の作品にも言及しており、『ねじまき鳥クロニクル』や『海辺のカフカ』、最近では『1Q84』など含め、英語圏で増加している春樹ファンを、村上ワールドへいざなっていると報じた。
世界最大のランダムハウス出版社は、英国での刊行日は未定としているが、村上氏の米国出版社の広報担当者は来年、英訳版を発売すると述べている。
英訳者は、アリゾナ大学の日本文学教授フィリップ・ガブリエル氏だ。彼は『1Q84』も英訳している。日本の新聞社の取材に対して、村上氏の作品は一見すると米国文学のたぐいに思われるが、日本の社会的特異性(オウム真理教や淡路大震災、経済衰退など)も影響を与えているのでは、と自論を展開している。
【海外のハルキストたちの反応は?】
ソーシャルニュースサイト「reddit」では、早速ユーザーが活発にコメントを寄せあっている。
最新作については、「待ち遠しい」から「期待しないほうがいい」と言うコメントまである。「多くのストーリーが互いにリンクしているようなら評判は上々になるかもしれない」という予想や、「期待を裏切らないでほしい」と願う投稿も見受けられた。
旧作の『ねじまき鳥クロニクル』、『海辺のカフカ』、『ノルウェイの森』、『1Q84』などにもユーザーは言及している。ストーリーや登場人物は好きだが、あまりにも長く退屈と批判する投稿もあった。作品を全て読破したという読者は、『1Q84』には失望したという。
一方、『ノルウェイの森』では、型にはまらない恋愛ストーリーが評価されており、彼の作品で最も成功した作品だと多くのコメントが寄せられている。「すごく共感できる」から「“気の滅入る調子”が最高」という投稿も見受けられた。
また、彼の作品全般に対しては、「幸せや充実が何を意味しているのか深く考察している」や「社会問題になっているテーマ(カルトや家族の絆、愛と暴力など)に取組んでいる」とのコメントもあった。さらに、作品にはメタファーとして「井戸」が良く出てくる、などマニアックな投稿も見受けられた。
「発売が遅い!」と怒りをあらわにするユーザーもいる。「彼の作品は英国で非常に人気があると思われるのに、どうして毎回翻訳する時間がそれほど長くかかるのか不思議だ」との投稿もあり、海外のファンたちは待ち切れないようだ。なお翻訳の遅さについては、村上氏に「翻訳にこだわりがあるらしい」と予想する投稿もあった。