新幹線を夢見たイギリスのHS2計画、いかに「悲惨な失敗」に至ったのか
◆過剰な高規格が災いか
迷走の原因は何か。英シンクタンク「ポリシー・エクスチェンジ」の交通部門の責任者であり、元首相補佐官(交通担当)を務めたアンドリュー・ギリガン氏は、サンデー・タイムズ紙への寄稿の中で、「HS2は最初から失敗することが決まっていた」と厳しく批判している。ギリガン氏は4つの根本的欠陥を挙げる。ルート選定の失敗、過剰に高規格な設計、ほかの交通網との連携不足、建設主体の事業者の浪費と不誠実さだ。
イギリスの土木学会(ICE)がHS2の失敗に関する報告書をまとめているが、その中で「過剰に高規格な設計」に関して、仕様が「世界最高水準の鉄道で、200年間使える設計」とされたため、過剰なものになってしまったと指摘している。HS2の設計時に「世界最高水準」を目指すよう政府から指示があり、時速400キロで運行可能な列車を1時間に36本も走らせる計画だった。(タイムズ紙)
そのためには99%の可用性が求められるほか、保守用のアクセス道路も含め、前例のないインフラが必要だという。だが、こうした過剰な仕様が要因となり、建設費が最初の見積もりを大きく上回ってしまった。さらに詳細設計が固まっていない段階から着工が進められたため、後から路線変更が必要になるなど想定外のコストが次々と発生し、最終的に計画が頓挫する結果となった。