中国・東南アジア結ぶ3000キロ鉄道計画、現在の状況は 各国の思惑、直面する課題

中国ラオス鉄道の車両(2022年10月)|filmlandscape / Shutterstock.com

◆鉄道網構築の狙い
 狙いは輸送力の強化だ。中国はベトナムの最大の貿易相手国であり、ベトナムの製造業にとって重要な輸入源である。現在、両国は高速道路と2本の鉄道でつながっているが、ベトナム側の設備は古く、改良が望まれてきた。

 一方、東南アジアでの影響力を拡大し、自国の利益へ誘導しようとする中国の意図も指摘される。スワラジャ誌は、シンガポールは東南アジア諸国連合(ASEAN)のなかで最も発展した国であり、石油豊富な中東とエネルギー需要の高い東アジアを結ぶマラッカ海峡への玄関口になっていると述べる。中国としては、シンガポールへの鉄道アクセスを確立することで、東南アジアへの影響力を強化し、南シナ海における領有権主張などでASEAN諸国が中国に譲歩するよう揺さぶる可能性があるという。

シンガポールのMRT|maison photography / Shutterstock.com

 同時に中国は、技術貿易による利益を図りたい思惑があるだろう。観光マーケティング会社「チェックイン・アジア」の創設者であるゲーリー・バウワーマン氏は、米CNNに対し、東南アジアは「中国に近い」ため、中国の鉄道技術の拡大先として「明白な」候補になったと指摘している。また、中国本土と東南アジア諸国を直接結ぶ鉄道は、長距離・長時間の旅行を好まない中国人旅行者にとっても利便性が高いと述べる。

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Text by 青葉やまと