日本のビッグマックは高い?安い? ハンバーガーで考える世界経済

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◆経済の実態にそぐわないこともあるが…
 ただし、前述のようにビッグマック指数は、あくまで親しみやすさを優先した簡易的な指標だ。経済の局面によっては、実際の状況との乖離(かいり)がみられる。
 
 アメリカのセントルイス連銀は、ビッグマック指数が物価動向を正確に表さない事例として、アメリカにおける2021年以降のインフレの状況を挙げている。
 
 同行の調査によると、2021年1月以降、消費者物価指数(CPI)の上昇率とビッグマック価格の上昇率は大きく乖離した。毎年1月と7月のデータで見ると、CPIの上昇率は2022年7月に8.5%でピークを迎えたが、この際、ビッグマックの価格上昇率は4.5%にとどまっていた。

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 こうした乖離の原因について同行は、ビッグマックの価格変動がCPI全体ではなく、「外食」分野の価格動向と連動する傾向にあるためだと指摘する。CPIには、エネルギーから住居、衣類まで幅広い項目が含まれているが、外食分野の比重は2022年の基準で5.4%と小さい。
 
 このため同行は、「ビッグマック価格の変動はCPIの推移と似た動きを示す」とおおむねビッグマック指数の有用性を認める一方、「しかし、アメリカの消費者が購入するほかの商品やサービスとの価格差があるため、全体的なインフレ動向から離れた動きをすることがある」と補足している。

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Text by 青葉やまと