原油の「船代」急騰、膨らむ日本の調達コスト 米国産輸入7倍

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 原油価格だけでなく、それを運ぶ「船代」が急騰している。

 海運・エネルギー市場の調査会社ケプラー(Kpler)によると、中東湾岸からアジアへ原油を運ぶ大型原油タンカー(VLCC)の運賃は9月、1バレル当たり32ドル近くまで上昇し、過去最高水準に達した。

 日本では中東情勢の混乱を背景にアメリカ産原油の輸入が急増している。調達先の分散が進む一方、記録的なタンカー運賃が新たなコスト要因となっている。

◆原油を運ぶ「船代」が過去最高水準に
 ケプラーによると、中東湾岸からアジアへのVLCC運賃は、2月の中東での軍事衝突前に比べて大きく上昇した。イラク産原油「バスラ・ミディアム」では、輸送費が精製後の石油製品の理論上の価値の21%に相当する水準まで膨らんだ。衝突前6か月の平均は4%だった。

 アメリカからアジアへの輸送費も上昇している。S&Pグローバルによると、9月4日にはアメリカ湾岸から中国方面へ向かうVLCCが2950万ドルで契約され、同航路の過去最高を更新した。ホルムズ海峡をめぐる不透明感に加え、大西洋側で利用できるVLCCが少ないことが運賃を押し上げている。

 紅海でも輸送への制約が強まっている。S&Pグローバルによると、9月9日以降、VLCCは紅海とアデン湾を結ぶバブ・エル・マンデブ海峡を通過しておらず、一部のサウジアラビア産原油は、より距離の長い喜望峰回りで輸送されている。

 航海が長くなれば、1隻のタンカーが次の輸送に使えるまでの時間も延びる。市場で実質的に利用できる船が減ることで、運賃の高騰につながる。

◆日本、米国産原油の輸入が7倍超に
 こうしたなか、日本の原油調達にも大きな変化が起きている。

 財務省の貿易統計をまとめた日本貿易振興機構(JETRO)によると、8月の日本の「原油および粗油」の輸入量は前年同月比3.6%増の1159万キロリットルだった。一方、輸入額は58.7%増の1兆1905億円に膨らんだ。

 特に増えたのがアメリカ産だ。輸入量は前年同月の7倍超となる366万キロリットルに達し、日本の原油輸入量の3割超を占めた。輸入額は4005億円で、前年同月の11倍超と、輸入量を上回る伸びとなった。

 財務省の貿易統計では、輸入額は原則として運賃や保険料を含むCIF価格で計上される。このため、輸入額の増加には原油価格や為替に加え、タンカー運賃の上昇も影響する。

 中東以外からの調達を増やすことは、供給途絶のリスクを分散することにつながる。その一方、アメリカなど遠方からの輸入が増えれば輸送距離は長くなる。

 ホルムズ海峡や紅海をめぐる混乱でタンカー運賃が記録的な水準にあるなか、日本は原油そのものの値上がりだけでなく、「運ぶコスト」の上昇にも直面している。

Text by 白石千尋