トランプ自動車関税、最も打撃を受けるメーカーは? 米専門家の見解

Sina Schuldt / dpa via AP

 アメリカのトランプ大統領が輸入車に25%の関税を上乗せする方針を表明しているが、専門家の分析では、とりわけ日本のトヨタ自動車が最大の痛手を負うと見込まれている。

◆車両価格が5000〜1万ドル上昇か
 トランプ大統領が3月26日に「アメリカ製でない」自動車への25%関税導入を表明したことで、世界の自動車業界に衝撃が走っている。米CNBCによれば、この決定を受けてトヨタ自動車株は3取引日で9.4%と大きく下落した。日産自動車株も9.3%、韓国の現代自動車株も11.2%も下落した。

 新たな関税措置は輸入完成車に対しては4月3日から実施され、自動車部品についても5月3日までに適用される見通しだ。ウェドブッシュ・セキュリティーズのダン・アイブス氏は米CBSニュースに、一般的な自動車の価格が「すぐに」5000〜1万ドル(約75万〜150万円)上がる恐れがあると警告した。

◆トヨタが最大の打撃を受ける見通し
 調査会社フロスト&サリバンでモビリティ分野を担当するビベク・ヴァイディア氏はCNBCに対し、「日本の自動車メーカーは厳しい状況に追い込まれている。特にトヨタについては、アメリカ市場での販売実績が大きいため、関税の影響を最も深刻に受ける」との分析を明かしている。

 アメリカの自動車情報サイトカープロ社が発表したデータによれば、2024年のアメリカ市場では、販売台数上位8社中6社をアジア勢が占めた。うちトヨタは198万台を達成し、アメリカの大手メーカーであるフォードやシボレーを押さえてトップとなっている。日本のホンダと日産が4位と5位につけ、韓国の現代自動車とキアがこれに続き、スバルが8位に食い込んでいる。

 一方、英インデペンデント紙によると、ドイツの高級車メーカー、ポルシェ、メルセデス・ベンツ、BMWの株価も関税導入の発表翌日に急落した。ブルームバーグ・インテリジェンスが試算した結果では、新関税の実施によってポルシェとメルセデスの2026年収益は約25%減少する可能性があるという。

◆生産拠点の移転は「一夜にしてできない」
 オートフォーキャスト・ソリューションズのジョー・マケイブ社長は、CNBCに対し、「自動車メーカーが関税回避を狙ってアメリカへ生産拠点を移そうとしても、工場移転はすぐに実現できるものではない」と語っている。

 資産運用会社コムジェストのポートフォリオマネージャー、リチャード・ケイ氏は、「トヨタや日産といった大手メーカーはアメリカ内に大規模工場を持っているものの、関税負担を相殺できるほど生産規模を拡大することは難しい」と言い切る。こうしたメーカーは関税導入によってアメリカ市場での販売価格上昇を避けられないだろうとの予測だ。

 テスラのイーロン・マスク最高経営責任者(CEO)もX(旧ツイッター)で見解を示した。マスク氏は「テスラも無傷ではいられない。関税の影響は大きい」と認め、「海外から仕入れる部品の価格が上がり、そのコスト増は小さくない」と厳しい見通しを示している

 アメリカ企業への影響もあるが、トヨタなど日本勢への打撃が大きいようだ。

Text by 青葉やまと