「日本が報復で米国債売却」主張の動画拡散…ファクトチェックサイトは「虚偽」判定
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「アメリカの関税政策に対抗して日本がアメリカ国債を大量売却している」と主張する動画が拡散され、54万回以上視聴されている。しかし、ファクトチェックサイトのスノープス(3月25日)によると、この主張には証拠がなく、内容は虚偽であるという。
◆「日本が米国債を売却」の偽情報
「トランプ関税で日本が米国債売却を警告 – 経済戦争勃発か!電気自動車、EV」と題したYouTube動画が21日に公開され、再生回数54万、コメント数2000以上と反響を呼んでいる。この動画では、日本がトランプ米大統領による関税の脅しに反発し、米国債を売却すると脅している主張している。また、これによりドル安や世界金融市場の混乱につながる恐れがあるとも解説している。
ファクトチェックサイトのスノープスが検証したところ、この動画はナレーション、台本、サムネイル作成にAI技術が使われた形跡があり、内容の信ぴょう性にも問題があることが判明した。
動画では「日本の米国債市場での行動が世界経済を揺さぶっている」と述べ、これを電気自動車をめぐる貿易摩擦と結びつけているが、こうした主張の根拠となる情報源は何も示されていない。
◆米国債にまつわる事実確認
ブルームバーグによると、確かに2024年11月のアメリカ大統領選挙後、日本の投資家たちは米国債を大量に手放す動向を見せた。しかし、この流れは2025年1月には反転した。
日本は米国債を約1.1兆ドル(約166兆円)保有している。米金融紙のバロンズによれば、大統領選後、各国は長期米国債を数十億ドル規模で売却した。ところが日本に関しては、2025年1月(現時点での最新データ)には逆に債券を買い増していたことが明らかになっている。アメリカ財務省が2月28日に公表した外国の国債保有に関する速報値も、同じ傾向を示唆している。
◆いかにももっともらしい偽情報
スノープスの分析によれば、こうした動画が多くの人に信じられてしまう理由に、トランプ政権が日本など主要貿易国への関税導入を表明していることがあるという。
2月、トランプ政権はメキシコ、カナダ、中国を対象とした関税計画を発表した。しかし、メキシコとカナダの政府関係者との協議を受け、実施を1ヶ月延期することになった。その後も二転三転している。
これを受け、本物のニュースを踏まえた、いかにももっともらしい偽情報が作成されている。スノープスは、こうした類いの動画の危険性を指摘している。事実と虚構を巧みに組み合わせ、AIが生成した出所不明の噂を拡散しているためだ。
視聴数稼ぎで虚偽のニュースを流す動画は多数存在する。YouTubeでニュースを視聴する際にはチャンネルの信頼性を確認したい。