トランプ関税で米の自動車はいくら値上がる? 現地の反応は?

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 アメリカのトランプ政権は4日、カナダ・メキシコからの輸入品に25%の新たな関税を課した。自動車については1ヶ月間適用を免除することになったが、適用されればアメリカの自動車業界は大きな影響を受ける可能性がある。新車購入価格上昇は避けられそうにない。

◆緊密な三国間連携に綻び
 AP通信によると、トランプ大統領による25%の対カナダ・メキシコ関税は、年間3000億ドル(約44兆円)規模のアメリカ自動車産業の貿易に大きな打撃を与える可能性がある。

 北米の自動車産業は長年にわたり、カナダ・メキシコを含む三国間で緊密に連携してきた。1965年以降、カナダとの自動車・部品関税撤廃を皮切りに、1994年の貿易協定でメキシコも加わり、効率的な生産体制が構築されていた。専門家は、カナダの比較的安価な鉄鋼やアルミニウム、メキシコの低コスト労働力、そしてアメリカの高度な専門知識と技術が組み合わさり、北米は自動車製造において競争力を確保してきたと指摘する。

 こうした状況を踏まえ、トランプ政権は自動車に対して関税免除の措置を講じた。準備期間として、USMCAのもとで輸入される自動車を1ヶ月間、対象から除外すると発表した。だが、この短期間で生産工程やサプライチェーンを大幅に変更することは現実的ではないとの見方が強い。

◆SUVで130万円以上値上げのおそれ
 アメリカの消費者は、新車購入価格の大幅な上昇に苦しむ可能性がある。カー・スクープ(3月5日)によれば、小型車は少なくとも4000ドル(約59万円)、大型SUVやトラックは9000ドル(約133万円)、電気自動車に至っては最大1万2000ドル(約177万円)の価格上昇が予想されるという。

 自動車業界からは強い懸念の声が上がっている。フォードのジム・ファーリーCEOは「多大なコストと混乱」が生じると述べ、業界全体への悪影響を懸念している。さらに米調査会社S&Pグローバル・モビリティの調査によると、関税の影響で北米の自動車生産は3分の1減少する可能性があり、1日あたりの生産台数が現在の6万3000台から4万3000台に落ち込むと予測されている。これにより、レイオフも懸念される。

◆優れた政策か否か? 反応割れる
 読者からはさまざまな意見が聞かれる。カー・スクープ誌と自動車メディアのカー&ドライバー誌の記事に一部読者は自動車業界や消費者への悪影響は限定的との見方を示す。
 
 「関税は良いことだ。国全体にとって素晴らしいことにつながるのだから、自動車メーカーも救済を必要とする事態にはならないだろう」
 
 「カナダやメキシコで自動車を生産しているが、今もアメリカでも生産しているので自動車業界への影響は軽微だろう」
 
 一方で、悪影響を懸念する声も聞かれる。
 
 「移民や犯罪の問題を減らそうとしているのに、メキシコから仕事を奪うならば、かえってその問題を悪化させることにならないだろうか?」
 
 「世界がアメリカ市場への依存を徐々に減らしてゆくことを願っている。アメリカ市場はあまりにも予測不可能だ」
 
 矢継ぎ早に政策を実行に移すトランプ氏だが、自動車業界への影響は未知数だ。

Text by 青葉やまと