「観光立国」目指す日本への試練? 外国人客の迷惑行為、海外でも報道
東京の明治神宮の鳥居に傷をつけたとして、アメリカ人観光客が逮捕された。この事件は、増える訪日観光客による行き過ぎたいたずらや迷惑行為の一例として海外メディアでも報じられ、「観光立国」を目指す日本の大きな課題だとされている。
◆鳥居に家族の名前……いたずらで逮捕
事件を起こしたのは、観光で来日していた65歳のアメリカ人男性だ。12日に明治神宮の鳥居の柱に爪で傷をつけたとして、器物破損の疑いで逮捕された。警視庁は、明治神宮周辺の防犯カメラの映像からこの男性を容疑者として特定し、都内のホテルで身柄を確保した。男性は鳥居にアルファベットで家族の名前を刻んだと認めており、いたずら目的だったとされる。
ロイターによると、アメリカ大使館の広報担当者は、大使館職員がこの男性と面会し、領事的な支援を行っていると述べた。プライバシー保護の理由で、さらなる詳細の発表は控えている。
神社での落書き事件は、今年に入ってすでに2回起きており、靖国神社の柱に落書きした容疑で、警察が3人の中国人に対し逮捕状を取っている。10月には、チリの女性フィットネス・インフルエンサーが、鳥居の上で懸垂をする動画をソーシャルメディアに投稿。批判が続出したため、女性は動画を削除し、謝罪文を投稿した。
◆インバウンド観光絶好調 迷惑行為も増加
今年は10月末までに過去最高ペースとなる3019万人の外国人観光客が訪れており、1〜9月の消費額も5兆8582億円となっている。今回の事件は、インバウンド観光ブームの中、日本が行儀の悪い観光客への対応に苦慮していることを示す最新事例だとロイターは述べている。
神社などの文化遺産の棄損や汚損以外にも、公衆の面前での泥酔、観光名所の過密化、ゴミのポイ捨てなどの事例も頻発。AFPは、一部の住人は手に負えない観光客の行動や、エチケット違反に辟易していると報じている。
一方、スペインの日刊紙エル・パイス英語版は、外国人観光客には「周りの人を気遣う」という日本の行動規範が不思議に感じられると指摘。彼らは電車の中での大声や大げさな身振りなどが疎まれることを知らず、日本人側も対立を避けるよう教育されているため、単に車両を変えることを選ぶとしている。
ネパールのニュースサイト『アジア・ライブ』も、観光客の無作法な行動の多くは、文化的誤解に起因していると述べる。たとえば神社が日本社会では神聖な場所であることや、鳥居の意味、神社での礼儀作法、参拝所における清潔さや静粛さの重要性を知らない人はたくさんいるとした。
◆まだまだ増える? 対策は急務
アジア・ライブは、日本の観光産業は、経済への貢献で称賛される一方で、国の資源やインフラに負担をかけていると指摘。外国人が知らない日本の行動規範を多言語で情報発信することの重要性や、特定の場所への入場制限など、管理された観光の必要性を示した。
ジャパン・タイムズの調査によれば、2023年の日本における国民1人当たりの観光客数は0.2人で、フランスの1.5人、スペインの1.8人と比べればずっと少ない。日本は2030年に6000万人の訪日観光客受け入れを目標としているが、その場合でも1人当たりの観光客数は約0.5人だ。欧州の基準からすればまだまだ低い今のうちに、有効な対策を打ち出すことが求められる。