米脚本家が大規模スト ストリーミングが変えた業界のエコシステム

ロサンゼルスでデモを行うWGAの組合員(5月2日)|Damian Dovarganes / AP Photo

◆ストリーミングサービス普及の影響
 今回のストライキは、2007年から2008年にかけて100日続いたストライキ以来初めて。前回は、インターネットからのダウンロードやオンデマンド配信といった「新しいメディア」におけるコンテンツ配信の二次使用料の支払い要求が主要課題であった。ネットフリックスをはじめとするインターネットのストリーミングサービスが世界的に普及した15年後の現在、脚本家をめぐるエコシステムも大きく変化している。

 エンターテインメント業界誌バラエティによれば、2009年から2019年にかけてテレビ番組の脚本家の数は70%増加し、若手の脚本家が多く業界に参入。新人の脚本家でも1週間4546ドル(約61万円)の最低報酬を受け取り、経験者であれば少なくとも週7412ドル(約100万円)の報酬を手にする。年間平均29週という勤務期間で計算すると、若手でも年間報酬13万1834ドル(約1780万円)を受け取る計算で、決して少ない額ではない。(単純な比較は難しいが、日本では、2019年に見直されたNHKドラマの最低脚本料(全国放送、30分)は19万円)

 一方、過去10年の間で、脚本家の報酬は4%減少し、インフレ上昇率を加味すると23%減少したとWGAは報告する。また、ストリーミングサービスでは、シリーズの回数自体が少ないものが多く、スタッフレベルの脚本家の勤務期間は20週。テレビ放送局における平均値29週に比べると、約3割の短縮だ。また、ストリーミングプラットフォームは、コメディの脚本家の報酬に関しては、最低基本保証(Minimum Basic Agreement:MBA)の適応外となっており、彼らには低い報酬が支払われているという課題もある。

 脚本家の報酬構成要素のもう一つが、「residuals」と呼ばれる二次使用料だ。前出のバラエティの記事は、ストリーミングサービスの二次使用料は1000万人が視聴しても10人が視聴しても一律だと指摘する。さらに、コンテンツを安価に「大量生産」するための「ミニ・ルーム(Mini Rooms)」が一般化していることも課題だ。従来、複数の脚本家が作業を進めるライターズ・ルームでは、7、8名が作業するのに対し、ミニルームでは2、3人が作業するという。若手の脚本家が制作現場に呼ばれることはないケースもある。ニューヨーカーは脚本家の状況を「悲惨だ」と表現する。

 脚本家が、ファストファッションのサプライチェーンの歯車になりつつあるという懸念がある。視聴者がいつでもキャンセルできるサブスクリプションの事業モデルにおいて、ストリーマーは、視聴者を飽きさせないために迅速に、新しいコンテンツを提供し続ける必要があるからだ。利益を拡大させるためのコストカットのプレッシャーもある。ストライキが長引けば、ストリーミングサービスを含め、すべての番組に影響が及ぶ。番組制作会社が中長期的な経済損失をどう見極めるのかが、ストライキ終了の鍵を握る。

Text by MAKI NAKATA