無形遺産になったフランスパンが危機 跳ね上がる光熱費、閉店するパン屋も
◆遅すぎた救済策?
フランスでは最近のエネルギー費急騰への対処策として、一般家庭など一部の利用者向けの電気・ガス価格を一時的に据え置く措置をとっている。しかしパン屋など電力消費量の多い顧客にはこの措置は及ばない。そのため多くのパン屋はエネルギー代高騰に翻弄されている。
セーヌ・エ・マルヌ県のパン屋コリーヌ・ビュタールは、電気会社との現契約では月1600ユーロ(約23万円)の電気代を支払っている。だが、この契約は1月末で切れる予定で、新契約への切り替え後は、月約1万5000ユーロ(約211万円)となる見込みだ。全国のパン屋は、多かれ少なかれ同様の問題を抱えている。(フランス・アンフォ)
この窮状を鑑み、フランス政府は年末、パン屋の光熱費が10~30%減額となる救済措置を2023年1月1日から取ると決めた。だが、光熱費だけで何倍にも膨れ上がっている現状においては焼け石に水の感が拭えない。
◆ブルターニュだけで年末数十軒が閉店
実際、元日からの救済措置を待たずして、ブルターニュ地方では昨年末、数十軒のパン屋が閉店に追い込まれた。そのうちの一人、モルビアン県ランドール村のクリストフ・ブゾミは、電気代の安い夜中にパンを焼くなど各種の工夫を試みたが、電気代の高騰と小麦粉や卵、バターなど材料費のインフレの前には効果がなかったと語る。(フランス3)
ブゾミ氏の店はランドール村で唯一のパン屋だったため、「今後は最低でも5キロ先に行かないとパンが買えない」と村民たちは途方に暮れる(同)。
同じくブルターニュ地方のグロワ島では、これまで島に2軒あったパン屋のうちの1軒が大晦日で閉店してしまった。閉店したトロニョン夫妻は、月1200ユーロの電気代が4~5倍になったことを理由としている。卵の価格が倍になってもパンやケーキの値段を変えずに頑張ってきたが、電気代の高騰には太刀打ちできなかった形だ。(ル・テレグラム、1/2)