ロシア富豪が消えた? 南仏コート・ダジュールに見る経済制裁の影響

豪華客船や、世界の富豪、政治家らの船が停泊するコート・ダジュールの海

 また、エフルシ・ド・ロスチャイルド邸の庭園コンサートでは、演奏中に真上のバルコニーでポーズを決め、写真を撮って浮いていた家族がいたが、やはりロシア人だった。当夜のプログラムは第一回目がスペイン、第二回目が日本、以前はロシア人のために流れていたと思われるロシア音楽は、チャイコフスキーのバレエ曲がライトアップ噴水ショーの時に使われただけだった。

 結論としては、コート・ダジュールから消えたのは、オリガルヒが落としていく札束のようだ。ロシア人はいても、豪遊せずにひっそりと暮らしている。フランスに限らず、ロシアへの制裁で経済的打撃を被っているのはロシア人よりも西側諸国のように見える。当地でのオリガルヒの動向をレポートしたラ・スタンパ紙(8月25日付)のタイトルにもあるように、「ロシア人はもっと金持ちになったが、少しだけ酔いが覚めた」だけのように映る。

 しかし、前掲のビルド紙の記事のタイトルは、「彼らがそうそう早くに戻ってこないことを祈る」となっている。お金に物を言わせるロシア人から自分たちの居場所を取り戻してホッと一息ついているフランス人が少なからずいるのも事実だ。せめて、これが少しでも経済至上主義を考え直すきっかけになれば、と願う。

在外ジャーナリスト協会会員 中東生取材
※本記事は在外ジャーナリスト協会の協力により作成しています。

Text by 中 東生