ロシア富豪が消えた? 南仏コート・ダジュールに見る経済制裁の影響
◆現地での肌感覚
さて、現地での様子はどうだったかというと、まず目についたのが、いままで見かけたこともなかったウクライナナンバーの車だ。海を見下ろせる絶景の別荘の前や、改築中の別荘の前に、ウクライナナンバーの車が駐車されていた。
筆者が泊まるアパートの敷地内に別荘を持っているロシア人の車もなく、ポーランドやスロバキアナンバーの車が停まっていた。ロシア人たちは何らかの手段を使って、近隣国のナンバーに変えているのではないかと推測されている。
当地に50年ほど前から別荘を持つアメリカ人に聞いてみると、確かに隣人のロシア人は見かけないという。以前は海辺の豪邸から毎週火曜日に、愛の証として花火を上げるロシア人富豪がいたものだ、とロシア人の栄華を振り返る。市場に行くとロシア語が聞こえたが、それはベビーシッターに子供の面倒の見方を指示していたためで、それ以外は以前ほど大声でロシア語を話さない。別荘が隣接している小道を歩くと、中からロシア語が聞こえたが姿は見えない。1軒の別荘など、24時間見張りを座らせている。ロシア人富裕層はコート・ダジュールから消えたのではなく、ひっそりと存在しているのではないだろうか。
別荘を持つ「住人」ではなく、観光客はどうだろう。ロシアから西側に通じる航路は、公には絶たれている。しかし、観光客は入ってきているようだ。当地の五つ星ホテル「ロイヤル・リビエラ」のレストランに陣取っていたロシア人グループは「モスクワからまずトルコに出て、それから西ヨーロッパに飛んだので大変だった」と話す。