米国は「景気後退」に入った? 分かれる意見、定義めぐり議論

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 米国の経済状況をめぐり意見が分かれている。景気後退の定義をめぐって議論が巻き起こり、ウィキペディアページは何度も更新されている。その詳細とは。

◆米国における景気後退の定義
 景気後退(recession)の定義とはなにか。米国では、無党派の非営利団体である全米経済研究所(National Bureau of Economic Research:NBER)の景気循環日付認定委員会(Business Cycle Dating Committee)が、公式に景気後退を判定する。NBERは、景気後退を「経済全体に広がり、数ヶ月以上続く経済活動の著しい低下」だと定義している。さらにこの定義の解釈にあたっては、深さ(depth)、広がり(diffusion)、および期間(duration)の3つの基準が考慮される。

 この3つの基準を満たした上で、景気後退の判断を下すにあたり、NBERは国内総生産(GDP)という1つの指標ではなく、経済活動全体におけるさまざまな指標を重視する。具体的には、実質個人所得、非農業部門雇用者数、家計調査による雇用者数、実質個人消費支出、卸売・小売売上高、鉱工業生産高といった連邦統計機関が発表する実質経済活動総額の月次指標が使用される。こうしたデータの確定数字がすべて出揃うには時間がかかる。そのため、委員会の景気後退の判断は遡及的に行われる。

Text by MAKI NAKATA