ハワイ州、観光客人数規制の動き 野生動物や地元住民に被害で
世界最大級の観光地であるハワイでは、例年夏休みなど長期休暇中は観光のピークシーズンで、世界中から観光客が訪れて賑わうが、夏が終わる頃には観光客(とくに家族連れ)が潮が引くように少なくなって閑散期に入る。しかし、いつものパターンと異なり、今年は3月~4月の春休み頃から、他国にバケーションに行けないアメリカ人観光客が一気にハワイに押し寄せた。日本人をはじめとする他国からの観光客がハワイにほぼ見られないいま、アメリカ人だらけのワイキキの光景は、ハワイ在住約25年の筆者も見たことのない一種「異様」な光景だった。
同じアメリカと言っても、ハワイ州民とアメリカ本土に住む一般的なアメリカ人の間では、文化や慣習、生活様式がかなり異なる。パンデミックで家に閉じこもっていた生活から一時的に解放され、バケーションを楽しむために来た本土人(ハワイでは「メインランダー」と呼ばれる)で埋め尽くされたハワイでは、例年よりも観光客によるトラブルが多く発生した。その結果として、観光客のいない静けさに慣れきていた多くのハワイ州民が、自分たちの暮らしやすさよりも、観光客による経済的恩恵が優先される現在のシステムに疑問を持ち始めたのである。
◆観光客数にリミット導入
昨年新型コロナウイルスでバケーションをキャンセルせざるを得なかった本土のアメリカ人が大挙としてハワイを訪れた今年の春夏、大きな混乱こそなかったものの、パンデミックの影響でレストランや店舗で人数制限が行われていることからワイキキやノースショアなどの観光地で大混雑が発生したり、レンタカーの数が足りずに価格が高騰したりというニュースが頻繁に聞かれた。パンデミックの最中に普段とほぼ同じボリュームの観光客に対応したのだから無理もないが、その結果、狭い島々からなり資源に限りのあるハワイ州で、上限を設けずに観光客を受け入れることに限界が見られてきたのである。観光産業が主な収入源であるハワイ州は観光客なしでは生き残れないが、今回のように大勢が一気に来すぎてキャパシティを超えた場合、住民の生活や野生動物を含むハワイ固有の自然環境にも大きな影響が出てくる。そこで、ハワイ政府と観光局では現在、島々のなかでもとくに混み合うオアフ島の訪問人数制限を検討しているという。
USAトゥデイ(電子版)によると、ハワイの観光産業を司るハワイ・ツーリズム・オーソリティ(HTA)は、次の3年間でオアフ島の観光客数を減らす計画を表明。また、観光客が利用するレンタカー数の制限や「ゾーニング」と呼ばれる土地利用の変更、空港におけるポリシーの見直しなども視野に入れている。しかし、HTA局長によると、具体的な上限数はまだ判明していない。
同記事によると、今年6月、ハワイへの観光客は合計79万1千人以上を記録。その大半がアメリカ西部から来た人々で52万1796人、そして24万7382人がアメリカ東部から来た人々だった。ほかにも南部や中西部などから来た人々がいるはずなので、合計するとほぼ100%がアメリカ本土から来た観光客ということになる。学校が夏休みに入る7月はこれよりさらに混み合ったことだろう。
これまでは日本人やカナダ人、ヨーロッパ人観光客などとの価格競争で高額だった航空運賃がパンデミックで格安になったことや、現在アメリカから他国を訪れにくくなっていることが原因だと思われる。観光客が戻ってきたのは良いことだが、これだけの数の人々が一気に訪れたことで、前述したような軋轢が生じたのは言うまでもない。
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