WTOの「復興」なるか 新事務局長オコンジョイウェアラの構想
今年3月1日、世界貿易機関(World Trade Organization:WTO)の新事務局長にヌゴジ・オコンジョイウェアラ(Ngozi Okonjo-Iweala)が就任した。女性初・アフリカ人初という見出しが目立つが、彼女の実行力にも期待がかかる。オコンジョイウェアラのWTO構想とは。
◆2020年のアフリカン・オブ・ザ・イヤー
ナイジェリア出身のオコンジョイウェアラは、グローバル・ファイナンスの専門家かつ経済学者であり、国際開発の分野で30年以上の経験を持つ人物だ。世界銀行では開発経済学者として25年間のキャリアを積み、No.2のポジションまで上り詰め、2012年には総裁候補にもなった。途中、2003〜06年および2011〜15年の2期にわたって、母国ナイジェリアの財務大臣として活躍した。そして、スタンダード・チャーターやツイッターなど、いくつもの組織における取締役会・理事会メンバーも務めている。
2020年、フォーブズ・アフリカはオコンジョイウェアラの功績を称え、彼女をアフリカン・オブ・ザ・イヤーに選んだ。彼女は財務大臣期間中、第12代オルシェグン・オバサンジョ(Olusegun Obasanjo)大統領と第14代グッドラック・ジョナサン(Goodluck Jonathan)大統領のもとで、さまざまな改革を実施した。もっとも重要な功績は、就任時に180億ドルあったナイジェリアの債務を完全に処理したことだ。また、政府歳入の7割を原油が占める同国において、原油価格を国家予算から切り離すことで、価格変動による財政悪化を抑え、価格が予算より上回った分を準備金として管理することで財政を安定化させた。ほかにも、テレコム業界へのインフラ投資拡大、インフレ率のコントロールにも寄与し、ナイジェリアの経済成長に貢献した。
一方、汚職防止と摘発にも注力したオコンジョイウェアラ。石油業界をターゲットにした汚職摘発が原因となり、2012年に当時82歳の母親が誘拐されるという事件も発生した。誘拐犯は、オコンジョイウェアラの財務大臣辞職と身代金を要求したが、彼女はいずれも拒否。詳細は明らかにされていないが、誘拐から5日後に母親は無事に解放された。不合理に屈しない彼女の姿勢が示されているエピソードである。(BBC)
誘拐された母親は医師で、元教授。父親も教授。叔母や叔父も含め博士号を持った教授陣に囲まれて育ったというオコンジョイウェアラは、自らも自然と学者の道を目指していたという。しかし、エヌグの高校在学中にビアフラ戦争(イボ族らがビアフラ共和国として独立宣言したことに起因する内戦)が勃発し、学業を中断せざるを得なくなった。イボ族であった両親は全財産を失い、オコンジョイウェアラは貧しい環境での生活を経験した。戦後、学業を再開した彼女は、ボストンのハーバード大学に進学。その後、同じくボストンにあるMITで博士号を取得している。
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