ベーシックインカムで勤労意欲は低下せず 米加州実験が示した可能性
カリフォルニア州ストックトン市で、2019年から開始されたベーシックインカム(BI)実験の途中結果が発表された。この実験は、収入が市の世帯収入の中央値以下である国勢統計区に居住していることを条件に、125人を無作為に選定。用途を限定せず、2年間にわたり毎月500ドル(約5万5000円)を支給するというものだ。最初の1年を終え、さまざまなポジティブな効果が報告されている。
◆若い市長が提案 ポジティブ効果続々
この実験を実現させたのは、2016年に26歳でストックトン市初の黒人市長となったマイケル・タブス氏だ。BIの議論に注目し、ぜひ実験を行いたいと考えていたという。シリコンバレーに近く、州の巨大ハイテク企業は仕事の自動化やAIの普及による失業問題に取り組もうとしており、資金提供に積極的だったため、ストックトン市は理想的な実験場だった(AP)。
タブス氏が2019年2月に設立した「Stockton Economic Empowerment Demonstration(SEED)」により、税金を使用せず、個人の寄付を財源として実験は始まった。2019年2月から2020年2月の1年間のデータを、大学の研究者が調べたところ、開始当時フルタイムで働いていた人は28%だったが、1年後には40%に増加していたことがわかった。BIを支給しなかった対照群では、5%の増加だったという(同上)。
BIを支給された人のなかには、不安や鬱などの症状を示す人が対照群より少なかった。また、高齢や病気の家族の介護費、学校の出費、交通費、医療費など、BIがなければ我慢していたものに出費できる余裕が増えていたことがわかった。ほとんどの人は食品、雑貨、光熱費、自動車に関する費用などにBIを使っており、酒やたばこに使われたのは1%以下だったという(米公共ラジオ網NPR)。
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