ドバイ国際空港、旅客数70%減 国際線旅客数は1位キープ

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 ドバイ国際空港のCEOは2月15日、2020年の旅客数について、新型コロナウイルスの感染拡大を受け前年から70%減少という過去最大の下げ幅を記録したと発表した。しかし、国際線旅客数世界1位の座は維持している。

 東西をつなぐ重要な交通拠点であるドバイ国際空港の旅客数は、昨年夏、長距離旅客機を扱うエミレーツ航空が運航を再開したことを機に増加に転じたが、2020年を通しては2590万人と2019年から大幅に減少する結果となった。航空各社は減便を実施し、運航数を50%超減らしている。

 ここ数ヶ月で、世界各国の旅行業界が崩壊の危機を迎えている。2019年には8640万人の旅客数を誇ったドバイの巨大空港も現在は多くの店舗が休業し、ゴーストタウンと化している。2つの主要ターミナルのうち、1つは封鎖中だ。

 ドバイ国際空港のポール・グリフィスCEOはAP通信の取材に対し、「本当に衝撃的な結果です。だからこそ私たちは人の流動を維持するために、とてつもなく衝撃的な方法で対応せざるを得ませんでした」と話している。

 グリフィス氏によると、主に現場勤務の従業員とメンテナンススタッフを対象とし、空港の従業員を8000人から3000人に削減したという。

 しかし12月には、ドバイがコロナ禍にも安心の観光地として各国の厳しい規制からの解放を望む観光客にアピールを始めたことにより、空港も復興に向けた勢いを得た。空港の発表によると、旅客数は12月の1ヶ月だけで業界の予想を上回る219万人を記録したという。イスラエルとの国交正常化という歴史的な合意がなされたこともあり、多くのイスラエル人がアラブ首長国連邦(UAE)を訪れている。バーや高級ホテルには、ロックダウンに疲れた旅行客が殺到し、クリスマスや大晦日を祝う人々で賑わった。

 ドバイでは昨年7月から渡航者の受け入れを再開しているが、それを後押ししているのが積極的なウイルス検査の実施である。渡航者は到着時と、多くの場合は出発前にもウイルス検査を求められるが、検査さえ受けていれば出発地を問わず受け入れを許可される。

 グリフィス氏は、「ドバイ国際空港としては、コロナウイルスワクチンの接種を速やかに進めることが、世界中で旅行を再開するための最も重要な鍵となるに違いない」と考えている。UAEは世界2位のペースでワクチンの接種を進めており、住民100人あたりの接種回数は50回を超える(2月15日時点)。

 ここからの数ヶ月間で国際観光を盛り上げるため、グリフィス氏はUAEやイスラエル、イギリスなど各国に先駆けてコロナウイルスの接種を進めている国の間であれば、住民の自由な渡航を認める「トラベルコリドー」または「トラベルバブル」と呼ばれる構想を提唱している。

 同氏は、「どの国でも大勢がワクチンを接種したと思える段階までいけば、再び安心して旅行できるようになるでしょう」と言う。

 ここまでどうにか持ちこたえてきた航空業界はワクチンに一縷の望みを見出しているが、今後の見通しはやはり不透明だ。今年、全体的な需要は増加すると見込まれているものの、航空各社は国際便の運航に慎重な姿勢を示している。エミレーツ航空の顔とされる2階建てのエアバスA380型機など、長距離飛行用のワイドボディ機は欠航が続く状態だ。ドバイ第2の空港であるドバイ・ワールド・セントラル国際空港はコロナ禍で旅客機の運航を停止しているが、衛星画像を見てみるとA380型機が数十機待機しているのがわかる。

 世界各地で徐々にワクチンの接種が進むなか、より高い感染力を持つ変異株の出現が懸念を呼んでいる。そこで各国が隔離措置の要件を変更しており、旅行客が国外で足止めされるなど旅行中のトラブルにもつながっている。

 一方UAE国内では、新型コロナウイルスの感染者数が大幅に急増中だ。これを受け、ほかの国々はドバイ行の航空便を停止する措置に乗り出し、ドバイ政府もまたエンタメ活動に対し新たな規制を設けた。イギリスは先月、ドバイ行きの直行便の全便欠航を決定した。搭乗者数世界1位を誇る国際ルートが凍結されたことで、ドバイ国際空港の旅客数は1月あたり数十万人減少したとグリフィス氏は言う。同空港を出発する便の中ではロンドンを目的地とするものが最も多く、昨年の旅客数は115万人にのぼる。

 ドバイは、新型コロナウイルスの変異株が世界に広がっているにもかかわらず、渡航者の受け入れを停止しなかったとして批判の的となっている。しかしグリフィス氏は「空港を封鎖しても、感染率との相関関係は一切ない」と否定した上で、「感染している可能性がある人の入国は防いでいる」と主張している。

 ドバイ国際空港は、2014年にロンドン・ヒースロー空港を抜き、国際線の旅客数世界最多の座に輝いた。以降トップを走り続けており、およそ90の航空会社が商業拠点である同空港に乗り入れている。一方、ヒースロー空港は新型コロナウイルスの感染拡大で大きな打撃を受けており、昨年の旅客数は2210万人にとどまっている。旅客数ヨーロッパ最多の座も、パリのシャルル・ド・ゴール国際空港に明け渡すこととなった。

 高層ビルが立ち並ぶUAEの首長国であるドバイにとって、長距離航空便の再開は商業活動の明暗を大きく分ける要因だ。エミレーツ航空はいまでも、ドバイ政府が所有するさまざまな事業をひとまとめにした巨大な事業体「ドバイ・インク」の基幹事業である。

 グリフィス氏は空港の復興について具体的な時期は提示していないが、時間がかかることを認めている。

 同氏は、「しばらくは過酷な状況が続くはずです。しかし長期的に見れば、前向きな見方もできると思います。ただし復興が本当に軌道に乗り、飛行機での旅の再開を待ち望む大勢の人々が実際に行動に移してくれるのがいつになるのかは、状況次第としかいえません」と述べている。

By ISABEL DEBRE Associated Press
Translated by t.sato via Conyac

Text by AP