予想上回る中国経済の回復 昨年主要国で唯一プラス成長

Chinatopix via AP

 2020年の中国経済はさまざまな困難にもかかわらず、2.3%の成長を達成した。アメリカ、日本、ヨーロッパの各地域がパンデミック拡大に苦しむなかで、中国市場は世界で唯一コロナ禍においても拡大を続ける主要市場となる見通しだ。この背景には、中国では新型コロナウイルス対策として閉鎖された店舗や工場が比較的早い段階で再開したことがある。

 中国国内では、ショッピングモールやレストラン、映画館などにも消費者の姿が戻ってきた。公式データによれば、2020年12月までの3ヶ月間の中国の経済成長率は、前年比6.5%の上昇を記録。その直前の四半期の成長率の4.9%からさらなる伸びを見せており、多くの専門家らの予測をも上回る水準だ。

 2020年はじめ、共産党政権は新型コロナウイルスへの対応として、国内経済の大部分を閉鎖するという前例のない強硬措置を講じた。この影響を受け、この年の第1四半期の中国国内の経済活動は6.8%の縮小を見せた。しかし中国政府は2020年3月の時点で新型コロナウイルスに対する勝利宣言を行い、工場や店舗、企業の事業所の再開を許可した。その措置を受けて、それに続く第2四半期には3.2%のプラス成長に転じた。中国は世界の主要国のなかで、パンデミック下においてもプラス成長に転じた最初の国となった。

 現在中国では飲食店などが多くの顧客でにぎわう一方、映画館や小売店は依然として顧客の回復に苦しんでいる。またショッピングモールでも、人の出はいまなお少ない。モールを訪れる買い物客に対しては警備員がチェックを行い、発熱などの兆候がないかを検査する。中国の観光業も復調を見せるなか、政府当局は、中国国内の複数都市での新たな感染拡大への対応として国民に対し、従来であれば最も活発な旅行シーズンとなる2月の旧正月休暇の時期に、旅行に出ずに自宅にとどまるよう広く要請した。

 中国からの輸出に関しては、マスクや医療品などの中国製品に対する世界的な需要拡大により、その数は急増中だ。

 データ情報サービス企業、IHSマーキットのラジブ・ビスワス氏はある報告書のなかで、「中国経済の伸びは個人消費支出の改善と純輸出額の急増を反映したものだ」と述べている。ビスワス氏によると、先進各国やほぼすべての主要な新興国市場が不況にあえぐなか、中国市場は2020年に成長を遂げた唯一の主要市場だった可能性が高いという。

 中国国家統計局は声明を出し、「中国経済は着実な回復基調にあり、人民の生活水準は力強く維持された」と述べている。また声明では、共産党政権の成長目標が「予想を上回る水準で達成された」としているが、その詳細は明らかにしていない。

 実際のところ、2020年の中国の経済成長率は、共産党政権が民主化運動を武力鎮圧した天安門事件後に中国が国際社会で孤立し、結果として低成長を記録した1990年の3.9%という数字をも下回り、過去数十年間で最も低い成長率だ。

 ING銀行のエコノミストであるアイリス・パン氏はある報告書のなかで、「中国経済は成長基調に戻ったものの、まだ経済が完全に回復したと結論づけるのは時期尚早だ。外需はいまなお完全には回復しきっておらず、この部分は大きな課題だ」と述べている。

 輸出事業者とハイテク製造企業は、貿易・技術・安全保障分野での米中対立に対して、アメリカのバイデン新大統領が今後どのような方針で臨むのか、という不確定要素に悩まされている。トランプ前大統領の任期中には、アメリカ製の部品や技術への中国企業のアクセス制限、ならびに通信機器大手ファーウェイに代表されるように、中国の製品と製造企業をターゲットとした関税引き上げが実施され、中国の輸出事業者は大きなダメージを受けた。

 パン氏は、「アメリカの新政権は少なくとも最初の第1四半期においては、前政権が打ち出した対中政策をほぼそのまま維持することが予想されます」と述べている。

 IMF(国際通貨基金)ならびに民間セクターの予測専門家らは、今年の中国の経済成長率はさらに伸びて、8%を超えると予想する。

 中国経済の急速な回復により、経済のアウトプットに関しては、中国はアメリカに匹敵するレベルにまで近づいた。

 中国政府によると、2020年の中国経済の総生産額は102兆元(約1644兆円)。この数字は、IMFが同年のアメリカ経済の総生産の予測額として算出した20.8兆ドル(約2170兆円)の約75%に相当する規模だ。IMFの予測では、2025年までに中国の経済規模はアメリカ経済の約90%の規模に達するとしている。ただし、中国の人口がアメリカの4倍であることを考慮すると、国民1人あたりの平均所得額はそれよりも低くなる予想だ。

 関税をめぐる米中対立にもかかわらず、中国の輸出は昨年3.6%の増加を見せた。中国の輸出事業者が、いまなおパンデミック下でさまざまな規制に苦しむ他国の競合企業から市場シェアを奪った形だ。

 2019年には3.9%の減少となった小売支出も需要の回復にともない、2020年12月には前年比4.6%の増加に転じた。個人消費についても、2020年9月までの四半期に早くも前年を上回る数字となった。

 さらには、自宅待機を命じられた何百万もの世帯が食料品や衣料品の購入をインターネット購入に切り替えた影響で、一般消費財のオンライン販売額は14.8%の増加となった。

 中国国内の製造業生産高は2019年比で2.8%の増加。その活動は年末に近づくにしたがって活発化し、2020年12月の生産高は7.3%の増加となった。

 2021年1月に入って新たな感染例の報告があり、中国の一部地域においては、旅行や移動の規制措置が講じられた。しかしながら、中国国内のほとんどの地域はその新たな規制の影響を受けていない。

 とはいえ、政府が国民に対して、伝統の旧正月に合わせた会合や旅行を控えるよう呼びかけている現状を考えると、観光・贈答品・飲食店などへの支出額の減少が今後新たにもたらされる可能性はある。

 JPモルガン・チェースでアセットマネジメントを専門とするチュー・チャオピン氏はある報告書のなかで、農場・工場・トレーダーが旧正月の休暇期間中にも操業を続けることにより、それ以外のセクターの経済活動も活発化する可能性があると指摘した。

 チュー氏は、「例年どおり、この四半期においては際立って高い成長率が記録される可能性が高いと見ています」と述べている。

By JOE McDONALD AP Business Writer
Translated by Conyac

Text by AP