アフリカの仮想通貨とアフロ・フューチャリズム構想

リスボンで開催された「ウェブサミット」に出席したAkon氏(2019年11月11日)|G Holland / Shutterstock.com

 米ブロックチェーン分析会社Chainalysisのデータによると、アフリカにおける仮想通貨の経済規模は、アフリカへの送金額、アフリカからの送金額ともに約80億ドル規模とされる。この数字は、ほかの主要地域と比較して最も小さい規模だが、送金ニーズ、自国経済と通貨の不安定さのリスク軽減のためなどの一つの選択肢として、アフリカでの仮想通貨の可能性を示唆するものだと、同社は分析する。仮想通貨の普及は、アフリカの新たな「リープフロッグ」事例となりうるか。

◆仮想通貨普及に向けた基盤
 Chainalysisによる仮想通貨の地域別動向報告書「The Chainalysis 2020 Geography of Cryptocurrency Report」によると、アフリカでは仮想通貨取引のうちの3割近くが1万ドル以下の送金で、個人間、もしくはスモールビジネスの送金ニーズに起因しているとの分析だ。この割合は、ほかの地域に比べて最も高い比率である。ロイターによると、Chainalysis提供の別データでは、この金額帯でのアフリカとの相互送金取引は、昨年に比べて55%増加し、6月には3.16億ドルの額を記録した。取引の中心は、ナイジェリア、ケニア、南アフリカの個人やスモールビジネスによるものだとされる。

 Chainalysisの報告書によると、送金の受け取りに関しては、95%がアフリカ外からの取引で、取引相手は各地に分散している。取引総額および取引数では北欧・西欧が最も多く、平均取引額が最も大きい相手地域が東アジアである。東アジアとの取引は、とくに中国との取引が中心のようだ。同報告書によると、たとえば、アフリカの国が中国から商品を仕入れる場合、香港などを経由して違法に米ドルを入手する必要があったが、Bitcoinを使って中国元を入手すれば、直接中国のベンダーと取引ができるようになったという事例が記載されている。一方で、対東アジアとの仮想通貨取引は、アフリカで働く中国人の本国への送金取引が主流のようだ。

 現在、アフリカ地域内での取引は限られているが、今後普及の拡大が考えられる。世界銀行の報告によると、200ドル以下の国際送金をサブサハラ地域の2ヶ国間で行う場合、約9%の手数料がかかり、ケースによっては15%もの手数料が発生する。これは、グローバル平均の6.8%を大幅に上回る。こうした国際送金のコストを下げる手段として、仮想通貨のさらなる普及に期待がかかる。

 アフリカでの仮想通貨は、経済や通貨が不安定である国における代替通貨となりうる可能性もある。たとえば、南アフリカのランドは過去10年の間に米ドルに対する通貨価値が半減した。グローバル経済、自国経済の影響を受けての変動も激しく、不安定である。南アフリカだけでなく、ナイジェリア、エジプト、アルジェリア、エチオピア、ガーナなど、同様に自国通貨不安定の課題を抱える人々にとっては、仮想通貨が自らの通貨資産を分散させる一つの手段となる可能性がある。

Text by MAKI NAKATA