「いまこそベーシックインカム」コロナ不況で注目されるアンドリュー・ヤン氏の主張

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◆コロナショック、従来の刺激策では対応困難
 ヤン氏のUBIに対し、選挙戦中は現実的ではないという批判も多かった。しかしすでにアメリカ国内で1200人以上の感染者が確認されている新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、にわかに注目を浴びている。

 トランプ大統領は、利下げが米経済を支えるとしているが、ヤン氏は賃金労働者にはまったく助けにならないと述べる。ウイルス封じ込めのため、多くの人が職場に行けなくなる。子供の学校が閉鎖されれば、母親は面倒をみるために家にいなければならない。人々が家に籠れば、レストランや劇場はビジネスにならない。よって、唯一の刺激策は、UBIだとツイッターで主張している。

 唯一の刺激策というのは行き過ぎかもしれないが、新型コロナウイルスは特異な経済ショックで、インフラ投資、公共事業、利下げなどの伝統的な刺激策の効果が限定されるのは確かだとThe Week誌は述べる。通常の不景気なら、労働者はまだ働くことはできるし、工場も稼働する。単に雇用のためのお金がないだけなので、労働者を再度雇用できるように現金補助や公共投資をすればいい。しかし、ウイルス封じ込めのための隔離や封鎖においては状況はまったく違う。職場が閉鎖されていて労働者は仕事に戻ることができないからだ。経済への影響を防ぐには限界があり、できるのは被害の緩和だ。現金を直接市民に配れば、まだ機能し需要がある部門にお金は回る。また隔離され仕事に行けなくなった人々にも、生活必需品を買うお金は行きわたると同誌は解説している。

◆専門家も現金給付を主張 経済への影響緩和の切り札
 隔離や封鎖で最も打撃を受けるのは低所得の労働者だ。ヤン氏は、多くの人々が収入減を恐れ、調子が悪くても職場に行ってしまうと見ている。もしUBIが給付されれば、治るまで自宅にいることができ、結果として他者への感染も防ぐことができると説明している(ウェブ誌『Inverse』)。

 それなら低所得者を中心に現金給付をすればいいという考えもあるが、米シンクタンク「エコノミック・ポリシー・インスティテュート」のジョシュ・ビベンズ氏は、新型コロナウイルス対策として重要なのはスピードだと指摘する。収入審査をすれば給付は遅れるため、シンプルに全員に同額を配ったほうが早いと述べる。

 ビベンズ氏以外にも、ブルッキングス研究所のジェイ・シャンボー氏が、スピード感ある現金給付を推奨している。オバマ政権で主任経済アドバイザーを務めたジェイソン・ファーマンも、アメリカ市民、または納税している居住者であるすべての成人に1人1000ドル、その子供にも500ドルを1回限り給付し、経済が悪化すれば自動的に支払いの延長を行うことを求めている(The Week)。

 世界保健機構(WHO)はパンデミックを宣言したが、現在のところ、新型コロナウイルスに有効な薬やワクチンはなく、開発にも時間がかかると言われている。ウイルスに打ち勝つ前に、経済が死んでしまうのはなんとしてでも避けたいだけに、アメリカのみならず世界各国でもUBI給付検討の価値はありそうだ。

Text by 山川 真智子