日本も支援する大エジプト博物館、2020年にオープンへ 観光復活に期待
2013年のムルシー政権排除を主導したアブドルファッターフ・アッ=シーシー氏は、翌年に大統領に選出され、反乱勢力に対するかつてない厳しい取り締まりでエジプトを治めている。政治デモは2013年の法律で厳しく制限され、今ではほとんどみられなくなった。ムルシー氏退陣後に勢いを増し、シナイを拠点に活動している反政府勢力はここ数年も武力を行使しているが、攻撃対象は機密部隊やキリスト教関係者が中心で、外国人旅行客を標的とすることはほぼない。
シーシー大統領は、エジプトのイメージ向上のため大規模プロジェクトを活用しようとしてきたが、その成果は良いも悪いもさまざまだ。2015年には新スエズ運河が華々しく開通したものの、世界貿易の成長が鈍化した影響を受け、政権が公約したほどの収益をあげられていない。カイロ郊外に壮大な新首都を建設するという計画はまだ初期段階にとどまっており、外国からの投資や、遠く離れた砂漠に大使館を移転させようとする動きはほとんどみられない。
エジプト王の至宝は大きな観光の目玉だが、タウフィック氏によると、新博物館がオープンして見込まれる来館者数は年間800万人ほどだという。2018年にエジプトを訪問した観光者数の見通しは800万人。昨年よりは増加したものの、2011年の動乱前のピークだった1,470万人には遠く及ばない。
博物館建設を担うのはエジプトの多国籍建設大手、オラスコムだ。日本政府から2006年に3億2,000万ドル、2016年には4億5,000万ドルの融資を受けた。日本はいまも、博物館の建設や工芸品の修復作業に協力している。しかし、建設費用が11億ドルとされるほどに膨らんだプロジェクトの追加資金を、誰が提供するかは不透明である。博物館の運営者については現在、入札作業が行われている。
資金の大半は、エジプト軍もしくはその関連企業が提供する可能性がある。これらの主体は、エジプト経済で大きな役割を果たし、他の大規模プロジェクトにも深く関与してきた。AP通信社では何週間にもわたって博物館訪問の許可を申請したが、最終的に承認を与えてくれたのはエジプト軍だった。
タウフィック氏によると、軍は「バリュー(価値)エンジニアリング」で協力しているという。相対的に高価な輸入品への依存を減らし、石の被覆材や素材などを現地調達することなどが挙げられる。
エジプトは2016年、IMF(国際通貨基金)による救済措置を回避するために変動相場制に移行した。その後、通貨価値が下落し、経済的弱者や中流階級は経済的な打撃を受けた。
「いま、これだけ建設費用が膨らみ、エジプト・ポンドが変動しているにもかかわらず、良好なマネジメントとバリューエンジニアリングのおかげで建設プロジェクトが全うできそうなことは、実に驚くべきことだ」とタウフィック氏は話している。
By BRIAN ROHAN, Associated Press
Translated by Conyac
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