米リニア計画、絞られるルート案 高まる期待「革命起きる」、根強い反対「金持ち専用」

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◆沿線の憂鬱
 WBJ誌によると計画委員会のエリザベス・ヒューレット委員長は、郡への影響が大きいにもかかわらず、設置される駅がないため経済的メリットを見込めないことが大きな問題だと述べている。具体的な懸念点としては、トンネル掘削に伴う住民や企業への影響、鉄橋部分が約18メートルから24メートルと住宅に近接すること、換気設備による経済・健康・治安への影響などを挙げている。

 計画の実現を目指す米企業「ノースイースト・マグレブ」のCEOを務めるウエイン・ロジャース氏は、これに反論している。同誌の別記事によるとロジャース氏は、首都近郊の渋滞の解消が優先事項であるとの認識を示した。州を結ぶ高速道路295号線では平均50分の渋滞が発生しているという。推進派は8車線の高速道路に相当する計画だと主張し、ロジャース氏はさらに、建設により7万4,000人の雇用が生まれるとアピールする。

 ただし、リニア開通で渋滞が緩和されるかは不透明だ。ボルチモア・サン紙は反対派の声として、リニアは富裕層だけに利用され、高速道路や公共交通機関の混雑緩和には寄与しないとの見方を伝えている。

◆新技術への誤解
 新技術ということで沿線自治体の反発は根強いが、ロジャース氏はこうした不安に対し、じっくりと説明をして理解を得る姿勢を見せている。WBJ誌の報道によると、プリンスジョージズ郡の計画委員会が表明した懸念事項に対しても、話し合いの場を持つことで問題の検討と解決を行いたいとの認識を示した。

 同紙の別記事では、氏が誤解を怖れていると伝えている。国、州、地元レベルの30以上の主体が関与する複雑なプロセスになっており、ミスコミュニケーションが懸念される。一例として換気設備の問題については、その名称が勘違いを招いているという。実際には非常時の脱出設備という位置付けであり、排気が行われることはない。車両は磁気浮上式であり、エンジンを搭載せず、排気ガスが発生しないためだ。また、トンネルは地下約24メートルから30メートルの深さに建設されるため、住民や企業への影響はほぼないという。新技術への期待と不安を抱える沿線自治体に対し、ロジャース氏の根気強い説得が続く。

Text by 青葉やまと