ウォルマート、ネット売上40%増 実店舗との連携が奏功 アマゾンとの競争熾烈に

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 米小売大手ウォルマートの業績が好調だ。第2四半期(5月〜7月)の総売上高は3.8%の伸びとなり、投資家を失望させた昨年末のホリデーシーズンからV字回復を見せている。オンライン・ショッピング全盛の時代に強豪アマゾンに対抗する強さの源は、実店舗とネットの融合戦略にある。

◆アマゾンに完敗の年末商戦 今期一転
 このほどウォルマートが公表した収益報告によると、1年以上営業している既存店舗の売上は4.5%の上昇を見せ、過去10年以上で最大の上げ幅となった。さらにオンライン・ストアの売上は40%増という急激な成長を見せている。多忙なファミリー層が買い物をしやすい環境を提供したこと、また、オンライン販売を強化したことなどが功を奏した、と同社はコメントしている。

 ブルームバーグ(8月16日)によると、オンラインの売上は「迫りつつあるアマゾン・ドットコムの脅威を前に、投資家たちの注目点」となっていた。40%という成長率は驚きをもってメディアに報じられている。

 ウォルマートは昨年の年末商戦期にオンラインの売上を急減させており、投資家の間には、アマゾンに水をあけられるのではないかという観測が広がっていた。その後4月にも売上は落ち込んでいたが、今四半期でV字回復を果たしたことになる。ロイターによると、ウォルマートの売上高は4年連続で増加しており、これは競合のどの小売大手をも凌ぐ実績となる。

◆懸念だった実店舗の多さを強みに
 オンライン・ストアに加え、実店舗の売上も堅調だ。既存店の客数は前年比2.2%の伸びとなり、その客単価は2.3%の向上を記録した。ネット小売大手アマゾンを前に確実な成長を続ける秘訣は、実店舗とネット販売の融合戦略にある。

 実店舗の多さはデジタル時代の障害になり得るが、ウォルマートの場合はかえって強みになっている、とブルームバーグは分析する。ウォルマートの顧客は、買いたい品目と状況に応じてネットと地元店舗を使い分けることができる。例えば、急に必要になる日用品や、試着をしたい衣料品などは、実店舗での購入が多い傾向にあるようだ。さらに、食品をネットで注文し、配送を待たずに店頭で素早く受け取るという具合に、実店舗の強みを活かしたサービスに同社は力を入れている。これを追随するかのように、アマゾンは傘下に収めたホールフーズ・マーケット各店での店頭受取サービスを開始する方針だ。ブルームバーグは、ウォルマートのモデルが正しいことが証明されたと見ている。

 ネットから実店舗への誘導は、ウォルマート側にもメリットがある。店頭への導線を確保することで衝動買いを期待できる、とロイターはメリットを強調。むやみに数の増えた店舗はネット・ショッピング時代の足かせとなる可能性もあったが、同社は2つのモデルを融合し、相乗効果を生むことに成功した。

 オンラインと実店舗の連携はさらに強化される方向だ。USAトゥデイ紙は、現時点で全米1,800店舗での受け取りが可能であるほか、食品配送の人口カバー率を年末までに40%に引き上げるという同社の計画を伝えている。ホールフーズ・マーケットでの店頭受取サービスを進めるアマゾンとの競争は、ますます熾烈になると見られる。

◆低価格と利便性で誘客 最低価格保証は危険要因?
 ネットとの融合で利便性と客単価を向上したウォルマートだが、懸念材料も見え隠れする。ブルームバーグは、物価上昇が同社にとってのリスク要因だと見る。P&Gがパンパースを値上げしたほか、クリネックスなど他社製品もこれを追うなど、価格見直しの動きが広がっている。主要製品で最低価格保証を行なっているウォルマートは、差額の吸収を強いられ苦境に立たされる可能性がある、と記事は指摘している。このほか、物流業界の運転手不足と燃料費高騰も同社に痛手となることが考えられる。

 ロイターも、同様の要素が利幅圧縮の原因になり得ると伝えている。すでに粗利益率は5四半期連続の減少となっており、17ベーシスポイント(bp)低下した。収益報告の中でウォルマートは、特定の商品分野への投資と輸送費の増大が主な原因だと説明している。アマゾンの存在も手強く、ウォルマートのEコマース責任者は、今年のホリデーシーズンに昨年以上の減速がある可能性を認めている。実店舗のネットワークを活用するウォルマートと、店頭の重視に乗り出したアマゾンの攻防は続きそうだ。

Text by 青葉やまと