経済学者に学ぶ、「関税とはいったい何か?」
著:Amitrajeet A. Batabyal(ロチェスター工科大学、Arthur J. Gosnell Professor of Economics)
アメリカと中国が、互いの輸入品に関税をかけるという泥仕合を繰り広げる中、世界的な貿易戦争が勃発しようとしている。きっかけは、3月にドナルド・トランプ大統領がすべての貿易国に対して鉄およびアルミニウムの関税を増額する、という先制攻撃を行ったことだ。このことから、果たして一連の行動が良識的なのか、という深刻な懸念と議論が巻き起こっている。
このような懸念を共有する経済学者の一人として、私は第一に関税が実際にどんなものかで、どのような効果をもたらすか、ということを知っておくべきだと考える。トランプ氏が設定した新たな貿易障壁の是非を判断できるのは、それからだ。
◆関税は2種類
関税というのは、簡単にいうと、輸入品に課せられる税金のことだ。
関税には2つのタイプがある。1つは輸入された品目の単位によって金額が固定されている「従量税」だ。たとえば、輸入鉄1トンあたり300ドル、といった具合だ。そして、もう1つの「従価税」は、輸入商品の価格に対して一定の割合でかけられる。輸入自動車に対して20%の関税がかけられる、といったものだ。関税はいずれも同じ作用をもたらす。
関税は最も古くからある貿易政策手段の1つであり、その歴史は少なくとも18世紀にさかのぼる。歴史的にみて、関税の主な目的は収益の拡大だ。実際、1913年にアメリカ合衆国憲法修正第16条が採択され、正式に所得税が制定される以前、アメリカ政府にとって最大の収益源は関税だった。
そのような経緯はあるにせよ、現在、関税の主な目的は収益拡大のほかに、外国の競合からの国内の特定産業を保護するため、であることが多い。
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