米中貿易戦争、勝つのは? 識者が指摘するトランプ大統領の失策

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 トランプ政権は、不公平貿易への対抗措置として、中国をメインターゲットにした鉄鋼、アルミニウムへの追加関税の発動と、中国製品への最大600億ドル(約6.3兆円)規模の関税の検討を発表した。中国側は報復措置を表明しており、貿易戦争勃発の恐れも出ている。米中どちらがこの戦いを制するのか?

◆中国の報復の影響は深刻。アメリカは耐えられない
 しかけた貿易戦争で痛手を受けるのはアメリカ側だと主張するのは、マーケット・ウォッチに寄稿した、米シンクタンク、太平洋評議会のマリー・カスペレク氏だ。アメリカにとって農作物は輸出の要の一つで、その最大の輸出先が中国だ。カスペレク氏は、トランプ氏の有権者の基盤でもある農業が報復の標的にされると指摘。また、中国はボーイング社との取引をエアバス社に変更し、保有する米国債の大量売却で対抗してくると見ている。中間選挙を11月に控え、制裁関税は短期的にはトランプ氏に有利に働くかもしれないが、中国の報復が長期的に与える影響は甚大だとしている。

 ジャーナリストのマイケル・シューマン氏も、ブルームバーグのオピニオン欄で、トランプ氏のロジックには弱点があると述べる。同氏は、アメリカの経済規模は世界一で、中国にとって最大の顧客ではあるが、その影響力は以前ほどではないとする。近年はアジアの新興国の成長が著しく、域内の貿易や投資は記録的に増加しているため、アメリカに制裁を課されても、これらの国々が代わりに選択肢になると説明している。加えて中国は巨大な国内市場を持っており、増えるミドルクラスがアメリカの消費者に取って代わるとし、制裁は十分ではないと指摘している。

Text by 山川 真智子