BigTechが資産管理サービス業界を一変する可能性 富裕層が期待

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 コンサルティング会社のキャップジェミニは、2017年ワールド・ウェルス・レポート(WWR)を発表した。本レポートは、個人富裕層(HNWI)とその資産、および金融業界に変化をもたらす世界経済の動向を追跡するベンチマークであり、世界の2,500人以上の富裕層からの回答をもとに、資産配分、手数料モデル、投資選好などの、富裕層の投資行動を分析している。

◆グローバルで加速する富裕層の人口と財産
 本レポートによると、2016年のグローバルでの富裕層の成長率は大幅に加速し、富裕層人口は2015年の4.9%から7.5%へ、財産は2015年の4.0%から8.2%へと拡大している。富裕層の財産は、2016年に北米と欧州がアジア太平洋の成長率に追いついたため、2025年には100兆米ドルを超えるペースのまま推移している(2016年のWWRで予測)。アジア太平洋、北米、および欧州の三大市場では、それぞれ富裕層の人口が約7.5%、富裕層の財産が約8.2%増加し、北米と欧州の大幅な飛躍とアジア太平洋の若干の減速という結果であった。

 ロシアやブラジルをはじめとするいくつかの市場では、その存在感を大幅に向上させた。 ロシアは、2015年の若干の減少の後、富裕層の人口と資産の双方において約20%の成長率を記録し、ブラジルでは、2015年の大幅な減少の後、人口と資産の双方で2桁の増加が見られた。

◆BigTechによる破壊が視野に
 BigTechがウェルスマネジメントに参入する可能性が台頭する中、積極的な動きが見られると本レポートは指摘している。BigTechは、Google、Amazon、Alibaba、Apple、Facebookなどの、これまでの金融サービスに存在しなかった、データ駆動型のIT企業を意味する総括的な用語を意味している。

 富裕層の半分以上(56.2%)は、効率、透明性、革新性、そして優れたオンライン機能を期待しており、ウェルスマネジメントサービスにBigTechを利用することを検討する用意があるという。BigTechのウェルスマネジメントへの参入は正式には発表されていないものの、既存企業は競争の脅威を認識している。但し、潜在的影響について見解は分かれているのが現状だ。

 BigTechが専門家を雇い、独自の能力を構築してウェルスマネジメントに参入すると決定すれば、既存企業にとって手強い競争相手として浮上する可能性がある。しかし、ウェルスマネジメント企業の真のパートナーとなり、富裕層の半端な満足度を克服する助けとなる可能性もあるという。企業およびウェルスマネージャーに対する富裕層の満足度はそれぞれ58.5%および56.3%であり、その有力な原因として限られたサービスオプションと現行料金体系だ。

◆高いリターンは大きなチャンスをもたらす
 ウェルスマネージャーが保有する運用資産の収益率は平均24.3%だ。この強力な業績を支える原動力として、富裕層のグローバルな投資アプローチ、融資の充足、多くの富裕層の成長本位のメンタリティと強力な資産クラスのパフォーマンスが挙げられている。

 また、BigTechと共同で提供するサービスは、下位の富裕層(100万米ドルおよび5百万米ドルの資産)の忠誠心を強化することに役立つ可能性があるという。このグループが世界の富裕層の90.0%を占めていることを考えると、彼らのニーズをよりよく満たすことは企業にとって極めて重要だと考えられる。

 ウェルスマネジメント企業がBigTechと提携することは、業界に広範な破壊をもたらす可能性がある。しかし、それはまた将来BigTechとの完全な競争に発展するリスクもはらんでいる。ウェルス企業はBigTechが将来単独で展開するベンチャービジネスに備え、競争力を維持するために、拡張性のあるテクノロジーに関するケイパビリティの開発に集中することが不可欠だと、本レポートは指摘している。

Text by 酒田 宗一