貧乏なアメリカ人は、裕福なアメリカ人よりジャンクフードを多く食べるのか?

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著:Jay L. Zagorskyオハイオ州立大学 Economist and Research Scientist)、Patricia Smithミシガン大学 Professor of Economics)

 ファーストフードを食べると健康を害するという批判を、どこでもよく耳にする。

 栄養学者が指摘するように、特に脂肪分と塩分が多いため、それが最も健康的な食事だとは言えないのは確かだ。より大きくは、米国と世界のあらゆる場所に蔓延する肥満のキーファクターだとも見なされている

 ファーストフードは比較的安価で、そのため貧困層はその他の所得層よりもファーストフードを多く食べている―― このような想定がある。一部の自治体はこれを信じ、ファーストフードへのアクセス制限を試みている。 食品ジャーナリストのマーク・ビットマン氏は、その感情を簡潔に要約する。

 「ジャンクフードが他の食品より安いという『事実』こそが、こんなにも多くのアメリカ人、とりわけ低所得者の多くが、なぜ過体重なのかを説明する拠り所になっているんです」

 最近発表した私たちの研究では、無作為に選ばれた多数のアメリカ人をサンプルにとり、ファーストフードを食べる人々を観察し、果たしてこの想定が事実かどうかを検討した。出てきた結果は、私たちを驚かせた。貧困層は、想定されたほどファーストフードを食べなかったのだ。彼らは中間所得層よりもファーストフードを食べる頻度が低く、富裕層と比べても、わずかに多く食べるに過ぎなかった。

 言い換えれば、マクドナルドのハンバーガー、ケンタッキーフライドチキンのポップコーンナゲットやタコベルのブリトーを楽しむ罪な喜びは、金持ちから貧乏人に至るまで、所得分布の全体で共有されている。どの所得層においても、圧倒的多数が3週間に1度はこの誘惑に負けていた。

◆ダイエットコークとオレオ
 しかしよくよく考えてみると、誰もがファーストフードを食べるという事実は、それほど驚くことではないだろう。

 ドナルド・トランプ大統領をはじめ、ファーストフード愛好家として知られる富裕な著名人たちがいる。トランプ氏に至っては、2002年にマクドナルドのコマーシャルを作り、ハンバーガーの美徳を賞賛したほどだ。世界で最も富裕な人物のひとりであるウォーレン・バフェット氏は、毎日コーラとオレオクッキーを「6歳児のように(たくさん)食べる」と言っている。(ちなみに彼は、投資においても同じく6歳児のスタンスだ。)

 この研究から私たちが学んだのは、私たちの全員が、ファーストフードの誘惑には弱いということだ。私たちは、1957年から1964年に生まれたベビーブーム世代の最も若い層をクロスセクション分析した。1979年以降の全期間を通して、彼らは定期的にインタビュー調査を受けている。

 回答者は、2008年、2010年、2012年の3度にわたり、ファーストフード消費量についての質問を受けた。これは彼らが40代から50代の時期に相当する。具体的には、面接官は以下の質問を投げかけた。

 「過去7日間で、マクドナルド、ケンタッキーフライドチキン、ピザハット、タコベルなどのファーストフードレストランの食事を何度食べましたか?」

 全体を見ると、全回答者の79%が、3週間に少なくとも1度はファーストフードを食べたと答えた。所得デシル(総世帯所得ごとに10%ずつに区切った10グループ)をまたいでも、大きな違いは見られなかった。最も所得の高い10%層のうちの75%が、最低でも3週に1回以上はファーストフードを食べたと報告した。最も貧しい層では、この割合は81%。 この間にある中間所得層こそがファーストフードの最大のファンで、約85%だった。

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出典:アメリカ労働統計局「青少年に関する全国縦断調査 1979年コホート」

 またこのデータから、中間所得層はファーストフードをより頻繁に食べる傾向が強く、平均すると3週間に4回以上も食べていることがわかる。この数字は、最富裕層で3、最貧層で3.7だった。

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出典:アメリカ労働統計局「青少年に関する全国縦断調査 1979年コホート」

 このデータは4年にわたって続けて採取されたので、富や所得の劇的な変化が個人の食週間を変化させるかについても、私たちは調べることができた。その結果、前より豊かになる、あるいは前より貧しくなることは、人々がファーストフードをどれくらい頻繁に食べるかに、ほとんど影響しないことがわかった。

◆ファーストフード規制
 これらの結果は、貧しい人々がファーストフードにアクセスするのを防ぐことに焦点を絞るのは、じつは誤りかもしれないと示唆している。

 たとえばロサンゼルス市は、2008年、市街南部の貧しい地域に独立店舗型のファーストフード店が新規出店することを禁止した。禁止理由は、「低所得地域、特に南東ロサンゼルスの商業集積地帯でのファーストフード事業は、地域の社会経済的問題を深化させ、公衆衛生上の重大な問題を引き起こす」というものだった。

 その後の研究で、ファーストフード規制のない近隣地域との比較において、この地域での肥満率が出店禁止措置後にむしろ上昇したことがわかり、出店禁止措置はまったく機能しなかったと示唆された。この例は、ファーストフード店の出店規制によって肥満問題を解決しようとする努力に対して冷水を浴びせる形となった。

◆それほど安くない
 貧困層とファーストフードに関するステレオタイプな想定にまつわる、もうひとつの問題がある。ファーストフードは、絶対的な金額においては、じつはそれほど安くもないということだ。

 米国の国勢調査の中で「リミテッド・サービス」と称されるファーストフード・レストランだが、そこでのひとり1食当たりの平均費用は、「リミテッド・サービス」すべての平均で8ドルを上回る。ファーストフードが安いと言えるのは、「フルサービス」のレストランで食べた時と比較した場合に限られ、ここでの平均はひとり1食約15ドルだ。

 さらに言うと、米国の貧困ライン以下で暮らす世帯にとって、8ドルは大金だ。そこでは2人世帯の年間所得が1万6000ドル余り、つまり1 日あたり44ドルの計算だ。こういう貧しい2人が、1日の収入の3分1以上を支払ってファーストフードを食べるということを、そうそう頻繁にできるのか? これは疑わしい。

◆ファーストフードの誘惑
 もしも政治家が、本当に貧困層の健康を良くしたいのであれば―― 低所得地域のファーストフード店規制は、おそらく正しい道ではないだろう。

 では、他にどのような解決策があるのだろうか?

 調査を通じて私たちは、「初めての食品を食べる前に、まず原材料チェックをする」と答えた人々は、ファーストフードの摂取量が他より少ない事実を発見した。このことはつまり、自分の食べる物に何が含まれているのか、すべてのアメリカ人が今より容易に知ることができれば―― その仕組みを作れば、消費者をファーストフードから遠ざけ、より健康的な食事の選択肢に近づける助力になり得ることを示唆している。

 もう一つの発見は、所得レベルに関係なく、労働時間が長くなるほどファーストフードの消費が増えるという事実だ。人々は、それが速くて便利だから食べる。つまり、栄養価の高い食品を、今よりもっと手近にクイックに利用できるよう導く政策を採れば、それがファーストフードの誘惑を相殺する役目を果たし得ることが示されたのだ。例えば、新鮮な果物や野菜が入った食事を提供するフードトラック(キッチン搭載の車両店舗)の認可の際の規制や手続きを減らす。そのことが、今より健康的でより便利な食事を、広く促進するかもしれない。

 私たちの目標は、ファーストフードの応援団になることではない。私たちは、ファーストフードに偏った食生活が不健康であることを疑わない。我々はただ、データに基づき、「貧乏人は誰よりも多くファーストフードを食べる」という説を疑っているだけだ。

This article was originally published on The Conversation. Read the original article.
Translated by Conyac

The Conversation

Text by THE CONVERSATION