TPP、中国を引き入れたほうが得策?米国で論点に “排除すれば出し抜かれる”
5日、ようやく環太平洋パートナーシップ協定(TPP)交渉が大筋合意に達した。TPPは世界経済の40%を占める参加12ヶ国を結び、アジア太平洋地域の貿易・経済活動の自由化を実現しようというものだが、中国、韓国は参加していない。交渉合意のニュースを受けた両国の反応や今後の影響を、各メディアが報じている。
◆TPPは米対中のシンボル?
米国は、TPPを中国の影響力とそれに対抗するアメリカという構図の中で捉えているようだ。ワシントン・ポスト紙(WP)は、中国が米国抜きで東アジア地域包括的経済連携を推進するなか、その影響力に対抗しようとする、オバマ大統領の「アジア基軸」戦略にとって、TPPは必要な経済上の要素を与えるものだと述べている。
フォーブス誌に寄稿した、UCLAのフェリペ・カロ、クリストファー・タン、エドワード・カーター教授も、米国のTPP支持派は、中国抜きの協定は太平洋における中国の影響力に対抗する助けになると考えており、米議会や政治フォーラムにおいても、耳触りのよい意見となっていると述べる。
◆将来的には中国は参加すべき
日本の安倍首相は、TPPは「アジア太平洋地域の安全保障と安定に寄与する」とし、中国の将来の参加を求めた。中国はTPP合意を歓迎するとし、「地域経済の統合を促進するどのような協定にも、中国は門戸を開いている」と発表したが(WP)、多くの米メディアは、中国の参加は当分ないと見ている。
米公共ラジオ放送APMのニュースサイト『Marketplace』は、不参加の理由に、中国の国内政策があると述べる。2001年に世界貿易機関(WTO)に加盟して以来、中国は様々な貿易障壁を撤廃してきたが、いまでもかたくなに、外国企業を犠牲にして、自国の産業や国営企業の保護を続けている。よって、経済改革を進めている習近平政権といえども、保護主義を取り除くことが目標であるTPPに加盟することはないというのだ。さらに、中国はオーストラリア、韓国などと個別の貿易協定を結んでおり、これらの協定とAIIB(アジアインフラ投資銀行)を合わせれば、世界経済のルールに大きな影響を及ぼし続けることができると踏んでいると同サイトは述べる。
フォーブス誌に寄稿したUCLAの教授たちも同様の意見だが、いまや米国を抜いて世界一の貿易大国となった中国を排除し続けるのは大きな間違いだと主張。TPPの参加国の一部は、すでに中国と貿易協定を結びAIIBにも参加しており、経済的な効率と政治的理解を向上させるためには、中国を引き入れることが得策だと述べる。アジアの製造業のハブとして、またアメリカの最大の貿易相手国として中国が重要なことは事実であり、米国がTPPから中国を除外しようとするなら、中国は独自の道を行き、米国を出し抜くこともありえる、と教授たちは警告している。
◆韓国はTPPに戦々恐々
一方、TPP参加を見送った韓国は、フィナンシャル・タイムズ紙(FT)によると、今後日本が貿易において韓国より優位な立場になることを憂慮しているという。ほとんどの輸出産業にとってTPPのダメージは少ないと韓国では予想されているが、自動車産業には強いインパクトがあると見られている。
日本と韓国は米自動車市場で激しく競い合うライバルだが、2011年に発効した米韓FTAにより、来年から韓国車の関税が撤廃され、日本車より有利になる。ところがTPPによって、この恩恵も長続きしないと見られ、6日にはさっそく現代自動車や起亜モーターズの株価が下落した。今月訪米する朴大統領のアジェンダにはTPP参加は含まれていないようだが、国内からは参加を望む声も出始めている(FT)。
一方、ウォール・ストリート・ジャーナル紙(WSJ)は、米国の自動車や部品に対する関税は現在も比較的低く、日本の自動車会社もすでに生産を海外にシフトしているため、TPPが日本に棚ぼた式の利益をもたらすことはないというアナリストの意見を紹介している。