安倍政権の財政再建策、機能していない?次のギリシャを探す海外メディア、日本に言及
ギリシャは、国際通貨基金(IMF)への15億ユーロ(約2000億円)の返済が出来ず、事実上の債務不履行(デフォルト)となった。市場関係者からは、債務危機が別の国でも起こる可能性が指摘されており、巨額の財政赤字を抱える日本にも、不名誉なスポットライトが当たっている。
◆次のギリシャはどの国?
ニューヨーク・タイムズ紙(NYT)は、今や債務問題は、治癒の見込みがほとんどない世界的病だと述べ、莫大な債務が世界中の政府の重荷となっていると指摘する。ギリシャの債務問題が大々的に報じられるなか、29日には、プエルトリコがデフォルトを宣言。危機的ではないものの、民間、政府に係わらず、多額の債務が、ブラジル、トルコ、イタリア、中国などの経済に減速をもたらしていると述べる。
米証券大手、レイモンド・ジェームスのケビン・ギディス氏は、ユーロ圏で次に気を付けるべきはポルトガルだと指摘。同時にスペイン、イタリアの名も挙げたが、この3カ国は、今のところ問題化しているとまでは言えないと、米CNBCに語っている。
NYTによれば、ゼロ成長が続き、腐敗し透明性のない政治・経済システムにも関わらず、債権者が金を貸し続けた結果、ウクライナもデフォルトに近づきつつあるらしい。債権者の一部は返済期間の延長で対応しようとしているが、ウクライナのジャレスコ財務相は、デフォルトは「理論上あり得る」と発言したという。
◆景気は財政改革よりも優先?
海外メディアは、巨額の財政赤字を抱える日本にも懸念を示している。ロイターは、競争力のある産業、自国通貨、莫大な資産を持つ点で、日本はギリシャとは異なると述べつつも、厳しい財政改革や年金削減などを遅らせているのはギリシャと同様だと指摘。債務残高の国内総生産(GDP)比も230%で、ギリシャの175%をはるかに上回り、急速に進む高齢化で膨れ上がる社会保障費のため、国の借金はますます増えると説明する。
これに対し、財務省アドバイザリー・グループのメンバーで、成長優先の安倍首相のアプローチを支持する高橋進氏は、歳出削減よりも、まず優先すべきは、景気回復の芽を摘まないことで、経済を停滞から脱却させることだとロイターに述べる。
しかし、経済がまだ好調で投資家から信頼されている間に、借入を抑制すべきという意見もある。第一生命経済研究所の熊野英生氏は、「短期に財政改革をすれば、政策の柔軟性のための余地が広がる」とし、経済の現状にフォーカスし過ぎることで、将来の成長を脅かす財政リスクを、あえて過小評価することになる」と主張している。
財政改革については、高橋氏も必要性は認めており、日銀の金融緩和による低金利が続く間、またデフレ脱却の前に、ある程度の進展があるべきと説明。財政の扱いにおいて市場の信頼を失ってしまえば、それを回復するのは困難だと述べている。
◆今のやり方では財政赤字は減らない
ブルームバーグ・ビューのコラムニスト、ウィリアム・ペセック氏は、安倍首相は円安による大企業の利益増と生産性の向上に頼って政府債務を削減しようとするが、その戦略は機能していないと主張する。
同氏は、円安で大企業は恩恵を受けたが、その利益を給与として分配せず、ため込んでしまっていると指摘。また、閉鎖的で古い日本企業の体質、高齢化、非効率さ、コスト高などで、生産性の向上には限界があり、技術革新、新しい産業の育成の必要があるのに、人的資本への投資はほとんど行われてないと述べる。
このままのやり方を続け、歳出削減もせず、新たな歳入源も見つけられないのなら、日本の状況は確実に悪化するだろうと同氏は主張。トリクルダウン(富める者が富めば、貧しい者にも自然に富が浸透する)経済に頼る首相のやり方に、疑問を呈している。