原油価格25ドルまで下がる可能性も? イラン協議合意で輸出再開へ一歩 群がる石油メジャー
イランの核開発協議で、イランと米国をリーダーとする(P5+1)は2日、最終的な解決に向けた枠組みで合意した。この協議の展開と平行して注目されてきたのが、イラン産原油の国際市場での復活である。
◆イランの制裁下での原油事情
イランは、制裁が課せられる以前の2012年半ばまで、250万バレル/日を産出していた。しかしこの制裁の影響で現在の生産量は130万バレル/日まで減産となり経済は低迷。若者の失業率は20%を越え、インフレ率も高い。制裁前までの一番の輸入相手国は中国であった。しかし、中国は2012年1月~5月の間にイランからの輸入を25%削減させたという。制裁後の輸入が発覚して米国から懲罰を受けることを恐れたのである。制裁初年度の3ヶ月ごとのイランの損失はおよそ80億ドル(9,440億円)と西欧は推測していた(米CNN/ロシアRT)。
イランのザンガネ石油相は、制裁が解除されれば、それから2か月以内に原油の輸出を2倍にすると述べた。しかし、この意見は余りに楽観的だ、とバークレー銀行の担当は語った(米CNN)。
ブルームバーグによると、現在イランでは700万から3500万バレルの原油が石油タンカーなどに貯蔵されているという。制裁が解除されると、この貯蔵原油が真っ先に輸出対象となる。そして徐々にイラン産原油が3ヶ月から半年の間に世界市場に供給されるようになると予測されている。しかし、イランは制裁下では第3国を経由して原油を輸出してきたという(スペインのエル・エコノミオスタ紙)。
◆原油価格が25ドルまで下落する
イランは原油埋蔵量では世界4位の国である。原油の輸出から得る財源が同国経済の柱となっていた。核開発協議の合意から、エネルギー部門に課せられた12項目の制裁が解除されれば、それはイランの経済回復に重要な要因となるという(米CNN)。
しかし、ここで問題になるのが原油価格である。昨年半ばから50%近い価格の下落がある。イラン産原油の市場復帰は、新たに原油市場で価格の下落を招く要因になると懸念されている。現在の供給市場は150万バレル/日が供給過剰となっていると言われている。OPECは、米国のシェールオイルの生産量が後退して、OPECの原油への需要は回復すると見ているという。しかし、仮に米国のシェールオイルの生産量が減少せず、その上にイランからの原油が市場に加われば、多量の供給過剰になる可能性が強い。さらに、イラクとリビアも増産する可能性があると言われている。OPECは今年6月の定例会議まで現状の生産方針が維持される、とクウェートのOPEC代表のナワル・アルフザイア氏が語った(コロンビアのLR紙)。
スペインの今年1月のシンコ・ディアス紙は、ザンガネ石油相が核開発協議が合意に至り、自国の原油が国際市場に再登場するのを見越して、「OPECが現状の生産を維持し続けるのであれば、価格は25ドルまで下がる」と述べた。一方で、イランの採算性に合う価格は130ドルだという。
現在の原油価格は安価過ぎて、ナイジェリアではイスラム過激派のボコ・ハラムでさえも、同国で産出される原油を強奪することもなくなっているという。価格が安過ぎて、闇市場でさえ売るメリットが無くなっているからだ(米WSJ)。
◆外国石油企業のイランへの進出は間近か
一方で、世界の石油国際企業は核協議の早い合意を望んでいたという。その理由はイランでの原油開発に乗り出すためである。米エクソンモービル、米コノコフィリップス、仏トタル、英BP、シェル、伊ENIそれにノルウエーのスタトイル、ロシアのルクオイルとガスプロムネフチらが既にイラン政府にアプローチしているという。
イラン政府も同様に欧米の石油企業との接触には強い関心を示しており、既に2003年にロウハニ大統領が初めてダボス会議に出席した時には、ザンガネ石油相を同伴させたというエピソードもある(以上、スペインのエル・パイス紙)。