“歴史的”日豪EPA発効、豪は歓迎ムード 牛肉団体、日本市場に期待
15日、日本とオーストラリアの経済連携協定(JAEPA)が発効した。両国の首相は日豪間の最も重要な協定だと絶賛し、豪メディアも概ね好意的に報じているが、一部では協定の効果を疑問視する声も出ている。
◆7年越しの交渉の賜物
オーストラリアの公共放送ABCは、7年越しの交渉でJAEPAが発効したと述べ、豪が日本と自由貿易協定を結んだ、最初の主要農業国となったと報じた。
7月の安倍首相のオーストラリア訪問時に出された共同声明で、両国の首相は、この歴史的協定は、単に両国の経済的結びつきを強化する始まりに過ぎないとし、「JAEPAは二国間の経済関係の次の段階の土台を敷くもの。そして日豪の『特別な戦略的パートナーシップ』を強化するだろう」、「高品質な商品、サービスの貿易の増加や、二国間の投資規制を緩和して経済成長を促進することにより、両国に重要な経済的恩恵をもたらすだろう」と述べている(ABC)。
◆両国で期待されるメリット
JAEPAにより、約97%の豪から日本への輸出品が、優先アクセス、または関税なしの対象となる。牛肉の関税については、冷凍牛肉が今後18年間で、現在の38.5%から19.5%に削減されることになっており、すでに発効日から8%減となった。ワイン、チーズ、甲殻類、大麦、さとうなども、JAEPAの恩恵を受ける(ABC)。
一方、豪にとっては、日本車や自動車部品の価格が下がるというメリットがある。日刊紙『オーストラリアン』によれば、JAEPAのインパクトはすでに表れており、トヨタ、フォード、ホールデンの自動車各社は、ファミリー向けの車種で最大2600豪ドル(25万円)、高級車では7600豪ドル(73万円)の値引きをしているという。
そのほかにも、日本企業による豪企業への投資に関する規制が緩和されたり、豪からの日本へ輸出される一部の鉱物への関税が撤廃される。また、日本から豪へ輸出される白物家電、電子機器等も関税なしの扱いとなる(ABC、オーストラリアン)。
◆日本期待に辛口意見も
JAEPAを最も歓迎するのは、豪の牛肉生産者団体だ。畜産協議会のトップ、ハワード・スミス氏は、新協定により、ライバルであるアメリカより、豪が日本市場では優位に立てると喜ぶ。関税削減は「生産者だれもが受ける恩恵」というスミス氏は、これを機会に、日本の需要に合わせ牛肉の生産量が増えることもあると踏んでいる(ABC)。
一方、西オーストラリア州のロビー団体、WAファーマーズのトップ、デール・パーク氏は、JAEPAにはあまり期待できないと述べる。現在の牛肉の関税8%削減など、大海の一滴にすぎないと述べる同氏は、むしろ他の多くの農産品が関税削減対象から外されたことが問題だと指摘する。
パーク氏は、現在は中国やインドネシア、ベトナムなどが豪産牛肉の輸入にかなり意欲的であり、市場が不足しているわけではないと説明。現実的なのは、最も金が稼げる場所に輸出することだとし、長期的にはJAEPAでいいことがあるかも知れないが、「短期的には、豪にとって日本市場がビッグプレーヤーになるとは思わない」と述べている(ABC)。