「アベノミクス、投げ出すな」 GDP悪化も、構造改革の徹底に海外紙は期待

安倍晋三

 17日に第2四半期(7-9月期)のGDPが発表された。前期比で実質0.4%、年率で1.6%縮小だった。2期連続のマイナスだ。2008年のリーマンショック以降、日本が4度目の不景気に突入した、と海外各紙は衝撃を報じた。


 海外のエコノミストらの予想とは大きく外れた数字だった。しかしながら、デイリー・テレグラフ紙は、今回のGDP縮小は、4月増税の影響による小さな落ち込みだ、とみている。

 また、フィナンシャル・タイムズ紙(FT紙)も、アベノミクスの失敗を論じるのは時期尚早だ、との見方だ。デフレマインド改善の微かな兆しもみられる。消費もわずかに上向いた。長期間に及ぶ価格の降下はついに終わったと言えるだろう、と評している。GDPの縮小についても見た目ほど悪くはなく、今回の数字は企業の設備投資の落ち込みに因るところが大きく、この数字が安定していれば僅かにプラス成長していただろう、と分析した。

◆日銀の悪手
 ウォール・ストリート・ジャーナル紙(WSJ紙)は、日本銀行の黒田東彦総裁が今や批判に対して無防備で、時勢に取り残された、と報じている。黒田氏は2%のインフレを目標とし、年に0.5%の成長を見込んでいた。製造業は十分に稼働し、失業者は減り、賃金と物価が上昇するとの青写真を描いていた。

 しかし、縮小する経済は、需給ギャップ(潜在産出量と実際の総産出量の差)が再び広がったことを意味している。黒田氏が制圧しなければならない長年のデフレに対するプレッシャーが大きくなったと言えるだろう、と同紙は報じている。

 2年前の大勝利で、安倍首相は、デフレと不景気を脱すると約束。黒田氏を総裁に任命し、市場はこれを歓迎した。しかし、思いがけなく悪い数字の発表で、2人に対する不信が大きくなった。ほんの2週間ほど前、黒田氏は、「日本経済は、緩やかな回復傾向を維持している」と述べたが、これは的外れだったようだ、と同紙は報じている。

 また、金融刺激策は、本当に日本の経済成長に効き目があるのか、という疑問も生じている。円安は、少なくとも一部の家庭や企業にとって、賃金や利益の上昇よりも輸入費用が高くつく、という悪い面がある。

 黒田総裁による最初の対策は下手を打った、とみているのはデイリー・テレグラフ紙だ。サザンプトン大学のリチャード・ワーナー教授は、「全く意味がない。経済への影響はない」「ほとんど2001年から2006年にやったことを繰り返しただけ。日銀は銀行外の国債を買い入れるべきだ」(デイリー・テレグラフ紙)と指摘した。

 ただ同紙は、金融政策には、長く変動しやすい移行期間が必要なことは知られている、との認識も示した。戦後、主要な国で、このような積極的な対策が講じられたことはないし、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)改革案にみられるように、多くの赤字国債をこれほど大胆に現金化しようとの試みもなかった、と報じている。

◆アベノミクスの確実な遂行を
 WSJ紙は、成長を減退させる緊縮予算でやり繰りしようとするのではなく、より大胆な刺激策を打つべきだ、と主張している。次の四半期は、どういう数字を示すかはわからない。何らかの衝撃があるとしても、大きく膨らんだ国の巨大な負債を抑える戦略は残されている、と積極的な対策を期待している。

 FT紙は、アベノミクス第三の矢がなかなか放たれない、と苛立ちを見せている。雇用市場の規制緩和と、成長率を上げることが主要な狙いの構造改革だ、とこれまでの大方の意見を繰り返した。

 国の財政健全化のためさらなる増税を行えば、4月の8%への消費税引き上げで衝撃が大きかったように、経済はまだ十分に耐えられないだろう、と同紙はみている。増税よりも構造改革が十分でない。短期的な選挙対策でなく、雇用市場をより柔軟に、正規・非正規雇用の格差を埋めるなどの政策に力を注ぐべきだ、と同紙は主張。安倍首相は自身の名を冠したアベノミクスをいま投げ出すべきではない。他に道はないのだから、と結んでいる。

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Text by NewSphere 編集部