1ドル125円に向かう? 前例のない日本の国債貨幣化 海外も推移を注視

 日銀は、金融緩和の一環として短期国債の買い入れを行っているが、9月よりマイナス金利であっても買い入れを実施している。買い入れた、満期3カ月から1年の短期国債の一部で、購入価格が償還価格を上回る状況になっている。

 フィナンシャル・タイムズ紙は、期末決算を控えた時期に、バランスシートをよく見せようとして余裕資金で短期国債を買う金融機関が増えたために、日銀はマイナス金利で国債を買い入れざるを得なくなった、というアナリストの見方を紹介している。

 マイナス金利で短期国債を買うことは、日銀に損失をもたらすことになる。どうして、そこまでして、日銀は国債を買い入れるのだろうか?

【公債の貨幣化】
 その理由について、ブルームバーグは以下のように説明している。

 記事の執筆者、ノア・スミス氏は、日本の債務を減らすには、基本的に3つの方法があるとする。財政再建、貨幣増刷、デフォルトだ。

 日本政府は何としても赤字を減らそうと、浪費的なインフラ建設への支出は削減している。では、どうしてここまで赤字が増えているのかと言えば、世界でも一番と言われる高齢化対策のためだ。

 財政再建は増税のかたちで行われることになる。消費税率を32%程度に上げれば、赤字はなくなるだろう。だが、これを行える政権は無い。安倍政権はある程度の増税を実行できたが、日本経済は痛手を負ってしまった。

 財政再建が難しいとなると、デフォルトを避けるには貨幣増刷しかない。日銀がお金で国債を買っている「公債貨幣化」は、これと同じ機能を持つ。

 このようにして日銀が踏み出した道は、他に経験した国が無いもので、国債の貨幣化を行っても債務のGDP比率維持は可能、という仮定に基づく大胆な実験なのだとブルームバーグは述べる。

【債務危機の転換点】
 一方、米国の投資ニュース・サイト『ValueWalk』は、日本の債務問題に対して辛辣な見方を持つことで知られる、ヘイマン・キャピタル・アドバイザーズのカイル・バス氏の見方を伝えている。

 バス氏は、理論的には、債務が対GDP比で150%に上り、税収の25%が利払いに充てられる状況になれば、破産したと見るべきだろう、と述べる。

 「これまで日銀は債券をすべて買い上げ、財政赤字を貨幣化してきており、経常赤字も貨幣化するだろう。これまでのところは、金利を引き下げ通貨安をもたらすという意味でうまくいった」

 だが、バス氏によれば、日銀が初めて通期の経常赤字に直面するため、円安はさらに続き、急速に1ドル125円に向かうという。

 「これが日本の債務危機の転換点になる」とバス氏は見る。

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Text by NewSphere 編集部