日経新聞の業績予想を海外メディアが批判 “超人的”な的中率が裏目?

 日本企業の四半期決算発表が先週ピークを迎えた。これに先立ち、日本経済新聞は恒例の業績予想を発表していたが、これがあまりに正確過ぎると海外メディアは批判している。

【実態調査】
 ブルームバーグの調べによれば、日経が営業利益を中心に業績予想を報じたのが45社。このうち、82%に当たる37社で示された数値・レンジが正しいか、あるいは会社側公表の実績値に対する乖離(かいり)が10%以内に収まっていたという。

【外国人投資家に不利】
 報道の自由は日本の憲法で保障されているものの、この慣行は外国人投資家の利益に敏感な日本政府にとって困った問題だろう、との見方をフィナンシャル・タイムズ紙は紹介している。

 昨年、日経は36万4000人のオンライン読者に提供していた翻訳サービスを止めたが、東証で取引を行っている60~70%が外国人であることを考えれば、日本語のみによる業績予想発表は「インサイダー取引」の類である、と証券大手CLSAのアナリストは述べているという。

【日経の企業努力?情報の出所は?】
 ブルームバーグは、日経の業績予想記事のほとんどが情報の出所を明らかにしていないと述べつつ、いちよしアセットマネジメントの秋野充成執行役員の以下の見方を伝える。

「日本市場では、業績観測記事は会社側のガイダンスの一部と受け止められている。会社側が話している可能性がある」

【日経の見解・合法性】
 日経は、業績予想記事に関するブルームバーグの取材に対し、編集方針に関わる質問には答えられず、当社は適切な取材に基づいて報道していると文書で回答したという。

 またブルームバーグは、日本のメディアが企業業績の予想記事を報道することは、ディスクロージャー・ルールによって制限されず、金融商品取引法上の相場操縦にも当たらない正当なものだ、という早稲田大学の黒沼悦郎教授の見方を伝えている。

【日本企業にとってのメリット】
 ブルームバーグは、「企業の意図としてはおそらく株価を上昇させたい、あるいは発表後に株価が急落しないよう、悪いニュースは少しずつ漏らしてインパクトを分散させたいということだろう」との前出の秋野氏による見方も伝えている。

【改善の動きは?】
 ブルームバーグによると、昨年、川崎重工と三井造船との経営統合に関する情報を日経がリークした際、当初両社はこれを否定、その後事実を認めたが、結局統合は破談となった。この騒動の後、東証は規制を強化したという。

 東証上場部の丸尾泰介ディスクロージャー企画グループ・課長は4月のインタビューで、メディアのリーク報道に対する、「当社から発表したものではない」、「決定した事実はない」などの肯定とも否定とも取れる短いコメントを排除した結果、企業と投資家とのコミュニケーションは改善されたと述べていた。

買い本番の日本株を狙え! 5年後に大化けする最強銘柄35選 [Amazon]

Text by NewSphere 編集部