韓国紙「他人の金で北のインフラ構築を」 中国のアジアインフラ投資銀行構想に期待
中国は、習近平国家主席が昨年設立を提唱した「アジアインフラ投資銀行(AIIB)」に対する出資を求め、各国への働きかけを強めている。
AIIBは、アジアの発展途上国などのインフラ整備を資金面で支援する目的で、中国が設立を目指す国際金融機関である。ただ、アジア地域の開発を支援する国際金融機関としては、既にアジア開発銀行(ADB)があり、AIIBの設立意義を疑問視する向きもある。なおAIIBの資本金は1000億ドルで、ADBの1650億ドルに迫る額を見込んでいるようだ。
【アジアで影響力を強めたい中国の思惑】
中国は、自らがリードできる経済グループを作るため、AIIBの設立を目指している、とエコノミスト誌および『All Africa』は指摘している。ADBは日本によって支配されている、とみているからだという。
例えば2010年に中国がADB総裁の座を狙った際、日本が水面下のロビー活動で抑え込んだ、と韓国の中央日報は伝えている。同紙は、ADBへの寄付金を増額すると言う中国側の要請も黙殺されており、日本は中国の発言力が強まるのを恐れている、と報じる。
【アメリカと中国の間の板挟み】
北朝鮮との統一を目指す韓国政府にとっても、AIIB加入は魅力的なようだ。ADBでは不可能な対北朝鮮投資ができる可能性があり、インフラ投資は「韓国企業が引き受ける」ことになるためだ。中央日報は「他人のお金で北のインフラを構築しよう」と題したコラムで、上記の主張をしている。
また同紙は別の記事で、韓国政府が「ソウルか松島(ソンド)国際都市にAIIB本部を誘致したい」と中国に要請していたことが明らかになった、と報じている。韓国は、中国と、AIIB加入に反対するアメリカとの間で板挟みになっている。しかし、「AIIB本部誘致戦」への参加により、“中国の独走阻止のために努力している”というメッセージを送ることができる、と同紙は評価している。
ただ、日本の専門家は、これによってアメリカが韓国のAIIB加入を許す可能性は「極めて低い」と断じている(日経ビジネスオンライン:鈴置高史氏)。
【日本は出資見送り方針か】
AIIBに対する中国の出資要請に対し、日本はADBとの役割分担が不明確として要請に応じなかった。日本は、中国が金融支援を通じてアジア各国への影響力を強めることを警戒している。水面下でアメリカと協力し、東南アジア各国やオーストラリアなどにAIIBへの出資を見送るよう求める方針だ、と『Sankei Biz』は報じる。