補助金漬けの“ゾンビ経済”を脱せるか? 過去の日本に酷似する中国、海外から懸念
昨年度決算の発表シーズンが始まった。フィナンシャル・タイムズ紙は、消費税増税後の景気先行きに不安な企業が、市場予測より弱気な収益見通しを出していると報じる。日本の実質GDPは現四半期に年率3.4%縮小、その後回復する予測だという。
【ここからが問題】
パナソニックは昨年度の大幅増益を報告しているが、今年度については増税後の家電需要減を見越して、アナリスト推定より14%低い利益予想を出したと報じられている。やはり大幅増益であったホンダも、アナリスト予想8900億円に対し7600億円の今期営業利益を予想する。
さらに東京・大阪証券取引所を運営する日本取引所グループが、アナリスト予想306億円に対し210億円の純利益予想だという。TOPIX銘柄の日取引額が昨年度の平均2.3兆円から、1.7兆円に下がる見通しとのことだ。同紙は、日本株は今年12%下落しており、これより悪いのはロシアとベネズエラだけだと述べている。
同紙は、日本企業は伝統的に利益予想を過小評価する傾向があるとは指摘した上で、企業のこうした弱気がまた株価を圧迫すると懸念する。専門家によると、悲観が収まるまで日経平均は15000円を超えられないだろうという。
【ゾンビマスターを討て】
同紙は別の記事で、国際通貨基金(IMF)が28日、アベノミクスは勢いを失っており、構造改革を押し通さないと失敗しかねないと訴えたことを報じた。アベノミクスの刺激効果減衰と中国経済ハードランディングの危険性が現在の2大リスクであり、「追加の改革がなければ、日本は再び低成長とデフレ、財政状況のさらなる悪化、地域への否定的な結果を伴う過度の金融刺激策依存に陥る危険がある」という。
政府は構造改革を約束してはいるが具体化できてはおらず、現在見えているのは来年10月予定の消費税再増税で、それでは財政再建には不十分だとのことだ。
ニュースサイト『クオーツ』は、中国経済の状態が80年代・90年代日本と酷似しておりバブル崩壊が懸念されるという主旨の論文の中で、日本の「ゾンビ経済」について触れた。2000年代初頭、日本の建設、不動産、製造、小売、サービス部門上場企業は約30%が不採算であったにも関わらず、失業増を恐れる国策と、損失計上を恐れる保守的な銀行融資によって、無為に生かし続けられていた。それは「白紙委任信用の邪悪な力によって動かされる」ゾンビのようなものということだ。
たとえば2000年に破綻したそごうは、諸銀行に1.9兆円の負債があり、うち1銀行がとうとう手を退いた時点で皆、総崩れとなった。これら銀行は、活気に満ちた新企業へ回すべき資金を、あろうことか彼らのライバルである大企業に「助成」していたに等しいという主張だ。こうした構造がすぐに改められなければ、日本人にはとんでもなく高くつくツケが回ってくるという。
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