日銀は「良くやっている」と海外紙が評価 企業の投資増を促進できるかがカギ
黒田日銀総裁と安倍首相が定期会談を復活させる見込みだと、ロイターが報じた。共同通信によると、15日に両者は官邸で会談を行い、黒田総裁は「目標達成に向け、その道筋を着実にたどっている」と報告したという。
消費税増税、中国経済の減速、ウクライナ問題などにもかかわらず、日銀は今のところ追加緩和は不要との考えを崩していない。甘利経財相などは、日銀が「極めてよく」やっていると評価している。しかしロイターは、「政府が最近の株式市場の下落や円高を心配している兆候だ」と評した。
【消費税ショック】
テレグラフ紙は、消費税増税後の買い控えが、特に高級品や電気製品で顕著であると報じた。例えば4月初週、高島屋は前年より売り上げが4分の1減ったという。一方でコンビニや、ユニクロのような低価格帯の店はあまり影響がないらしい。約8%減となったダイエーは、増税前の買いだめ量がおよそ1ヶ月半~2ヶ月分と見られるため、買い控えはそれ以上は続かないと楽観的だという。
ブルームバーグは、ドトールが「材料や労働力のコスト増を理由に」コーヒーを10%値上げするなど、増税分以上の値上げが起こっていると報じた。専門家によると、日本の会社は決算期の関係から4月または10月に価格改定を集中させる傾向がある。また多くの企業は、材料・運用コスト増を完全には客に転嫁できず、「今や一部は消費税引き上げを好機として、賃金上昇コストを取り戻そうと狙ってもいそう」であるという。
【国民のインフレ反対に戸惑う日銀】
ブルームバーグによると、このような状況で専門家らは、4月の消費者物価が1982年以来の最速となる、3.5~3.6%増にも達するおそれがあると予測している。あるいは増税分を除いて1.8~1.9%など、すでに日銀の2%目標に近いレベルである。
しかし、残業代とボーナスを除く賃金は、2月には前年比0.3%減で、21ヶ月連続となる下落であった。2月の消費者信頼感指数は38.3で3ヶ月連続下落。6年ぶりの高水準であった昨年5月の45.7から一転して、2011年9月以来の最低となった。
ブルームバーグは、日銀の白井さゆり政策委員が2月27日、インフレ目標どころか「大半の大衆が物価上昇を好ましくないと思っている」ことを明らかにし、衝撃的だと評したことに言及している。
【ECBよりはずっと良くやっている】
一方フィナンシャル・タイムズ紙は、日本と、金融危機に痛打されていた南欧諸国などを比較して、欧州中央銀行(ECB)よりは日銀はずっと良くやっており、過小評価されていると論じた。
両者の違いは、「日銀は債権者に優しい政策スタンスを放棄し、より債務者に優しいものを採用している」が、ECBは逆であること。そして「ECBが依然として通貨の安定にとりつかれている」のに対し、日銀はすでに20年間の「安定」の結果に幻滅しているから大胆になれる、とのことだ。
また、今本当に注目すべきは消費税増税の余波などよりも、日銀が貯蓄(特に企業の貯蓄)をやめさせて、デフレによる実質債務増や担保価値の目減りのせいで伸び悩んでいた借り入れ(特に中小企業による)を促進しようとしている、「パラダイムシフト」なのだという。
政府としてはそこで、円安=株高という、ここ10年だけの常識を打破できるかどうかが、アベノミクスが「本物」かどうかの分かれ道になると記事は訴える。また、年金基金の国債依存を減らすなどの戦略転換において、政府が国内ヘッジファンドと協力するという、「第4の矢」が見えてくるとのことだ。
アベノミクスのゆくえ 現在・過去・未来の視点から考える (光文社新書) [amazon]