日銀 政策据え置きの発表 海外紙は“ネクタイで市場の憶測をけん制?”と注目
消費税増税から1週間経った8日、日銀政策委員会はなおも政策の据え置きを全会一致で決定した。
黒田総裁は、企業間で多少の不安はあるが需給ギャップは縮小し雇用情勢は良く、消費者物価は着実に伸びており、「トレンドとして緩やかな回復を続けています」と主張する。しかし市場には懐疑的な意見も根強い。
【言うほど順調感はない市場】
フィナンシャル・タイムズ紙は、三越伊勢丹では4月の最初の6日間、売上高が13%減少したと指摘した。日経新聞のエコノミスト調査では、18人中10人が7月にも上場投資信託の購入増のような形で追加緩和があると予想し、今年中には起こらないと予想したのは3人だけであった。日銀の今年度の実質GDP成長率予想は1.4%となっているが市場の期待値としては0.7%であり、専門家によると「日銀が主張するほど、実際の経済は順調に回復してはいません」という。
ニューヨーク・タイムズ紙も、短観調査での企業感情が1997年の前回増税時よりも悪かったことや、輸出データの弱さを不安視し、日銀の楽観論には懐疑的である。こちらも、「バラ色の予測に疑問が挙がれば、日銀は6月か7月に再び緩和をするかもしれません」との専門家の見方を伝えた。
【ネクタイ予報】
今回の会見は、日銀としては初めて、インターネット生中継された。従来は会見終了まで内容の報道は禁止され、記者もカメラマンも部屋から出られなかった。
ウォール・ストリート・ジャーナル紙によれば、黒田総裁は「破顔一笑」してみせるなど余裕のある様子であり、生放送で問題を起こして「不必要に市場に影響するとの懸念を一掃」した。総裁は、生放送は迅速にメッセージを配信するための、世界的トレンド(米連邦準備制度や欧州中央銀ではすでに実施している)に従った決定だと述べている。
一方同紙は、総裁が水色のネクタイを着用しており、さらに生放送にあたって準備したことを質問されて、その「ネクタイの色」と答えたことに着目した。
トレーダー界には金融当局者の強気・弱気の気分がネクタイの色に反映されるという説があり、マリオ・ドラギ欧州中央銀総裁などはネクタイが赤ければ強気・青ければ弱気という傾向が見えるのだという。ある専門家によれば、黒田総裁はそれを知っていると見られ、水色のネクタイで「市場の憶測を牽制」したとのことだ。
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