消費増税控え、自動車・百貨店の売上が増加 反動の悪影響は“前回よりまし”との見方も
5%から8%への消費税率の引き上げが、いよいよ目前に迫ってきた。増税前の駆け込み需要によって、個人消費はこのところ順調だ。しかしその反動で、4月以降は大きく落ち込むことが予想されている。それはどの程度深刻なものになるだろうか。海外メディアが、その見通しについて報じている。
【増税後の自動車産業の見通しは?】
切実に影響を受けそうな業界の代表として、フィナンシャル・タイムズ紙は、自動車産業を取り上げる。
自動車メーカー14社によって構成される日本自動車工業会は、4月からの来年度、乗用車・トラックなどを合わせた総需要を、計475万台と予想している。今年度の総需要は、まだ推計値だが563万台としており、これより15%も落ち込むことになる。
昨年12月の自動車販売台数は、前年同月と比べて29.4%増、1月は30.6%増だった。駆け込み需要による購入が予想よりも多かった、と同紙は述べている。
また、デパートの売上高にも、駆け込み需要の影響が見られる、と報じる。日本百貨店協会によると、デパートの美術・宝飾品部門の2月の売上は、前年同月比で24.5%上昇した。化粧品部門は11.7%、家具部門は24.8%上昇した。また、昨年11月より4ヶ月連続で、売上は前年を上回っているという。
【増税後の見通しは意外に明るい?】
一方、増税後の経営状況に明るい見通しを持っている企業が多いことを、ロイターは報じている。これは、ロイターが今月実施した企業調査に基づくものだ。
それによると、回答を寄せた企業の59%は、増税した後も、今年中には収益が前年並みに回復する、と予想している。12月に同じ質問をした際は、この数字は47%だったという。また、およそ40%が、半年以内に回復すると予想している。12月の調査では29%だった。
要因として挙げられたのは、賞与支給の改善が見込めること、被災地復興と2020年東京オリンピックに関連して、公共事業やその他の建設事業が急増していることなどである。政府がさらなる景気刺激策をとることも期待されている。
【前回、消費税率が上がったときほどマイナス影響は大きくない?】
前回、消費税率が3%から5%に引き上げられたのは、1997年のことだった。この増税のせいで、景気は失速。現在に至るまで重くのしかかっている、デフレ心理を生み出す一因にもなったと非難され続けている、とロイターは語る。
今回の駆け込み消費は、その時ほど大きくないようだ、という日本総研の上席主任研究員、枩村秀樹氏のコメントを、ロイターは紹介している。エコカー補助金や家電エコポイントなどによって、ここ数年で、すでにテレビや自動車を購入している消費者が多かった、というのだ。
そのような点も踏まえて、日本総研の主任研究員、小方尚子氏は、今回の増税によるマイナス影響は、前回ほどではない、と予測している。
【日本経済回復への道筋】
企業の収益には明るい見通しがあるが、それが日本経済全体の回復に結びつくためには、基本給の昇給と、国内での設備投資が欠かせない、とロイターは述べる。ところが、企業調査によると、製造業者は、資金の使途として優先順位が高いものを、研究開発、海外展開、内部留保の維持だとしている。
自国の市場を拡大することにも、給与を上げることにも関心がないのは、とりわけ心配だ、と枩村氏は語ったという。もしそうなら、企業収益は改善しても、日本経済は改善しないままだろう、という。
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