赤字に増税…それでも日銀が強気な理由とは? 緩和期待の市場へのけん制が狙いか

 日銀政策委員会は11日の定例会合で、政策の維持を全会一致で決めた。1月の貿易および経常収支が記録的な赤字となり、消費税増税も来月に迫る中、市場には追加緩和への期待が高まっているが、黒田総裁は楽観論を強調。そうした緩和期待への牽制ではないかと見られている。

【輸出だけは初めて下方修正を認める】
 日銀は、輸出についての評価を先月の「持ち直し傾向」から「横ばい圏内」に下方修正した。昨春の緩和開始以来、経済のいずれかの部分の評価が下方修正されたのは初めてのことだが、貿易赤字の大幅増からすれば「横ばい圏内」でも充分に楽観的といえるだろう。黒田総裁は新興国需要の弱さのほか、米国の大寒波やアジア圏の旧正月連休を原因に挙げ、これらは一時的な要因であって、欧米の回復傾向が波及しさえすれば輸出は持ち直すと強調している。

 一方、増税前の駆け込み需要が示唆されている設備投資や工業生産については、上方修正した。そのため経済全体としては「緩やかに回復」し続けていると黒田総裁は評価し、「経済は潜在成長率以上に拡張を続けられます」と自信を示した。また、2%目標を掲げているインフレについても、着実に目標に向けた軌道上にあると指摘した。インフレは増税によって加速され、「各電力会社が増税を転嫁しようとする方法が異なる」結果まずは4月に1.7%ポイント、5月からは2.0%ポイント上昇するだろうという。

 ロイターによると、黒田総裁はウクライナ問題などの地政学的リスクも一蹴した。総裁は「全体として、世界経済の下ぶれリスクは減少しています」「必要であれば政策を調整することは躊躇しません・・・ですが現時点で政策調整を行う必要は見出せません」と、いつもの黒田節を披露している。

【遅くとも今年中には追加緩和と見る市場】
 ブルームバーグのエコノミスト調査によると、消費税増税後、4~6月の経済成長は3.9%の大幅なマイナス成長とみられている。またブルームバーグは、最新の内閣府調査では2月の「タクシー運転手、スーパーマーケット経営者、レストラン労働者のような人々」の2~3ヶ月先の経済期待が東日本大震災以来最大の落ち込みとなり、ほぼ安倍政権発足時の水準に戻ってしまったと指摘した。

 各紙の調査では、ほとんどのエコノミストが、遅くとも今年中には日銀は追加緩和に追い込まれると予測している。そして黒田総裁が、輸出の下方修正を他の上方修正で打ち消すかのように楽観論を強調している狙いは、そうした緩和期待を牽制することであろうという。フィナンシャル・タイムズ紙は、増税前の最後となる今回の政策会合決定は「別の緩和ラウンドに頼る前に、財政引き締めの効果が判るようになるまで日銀が待とうとしている」ことを示す、と評している。

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Text by NewSphere 編集部